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新興住宅地やマンション、コミュニティーがほしい、意識に変化、しかけ次々(生活)
地域でいざ近所づきあいを始めようと思っても、きっかけは見つけにくいもの。そこで新興住宅地やマンションでは、開発事業者がクラブ活動を提供したり自治会設立を手伝ったりして住民交流を促す例が増えてきた。なぜ今、「地縁づくり」なのか。現場を探った。
「リズムに乗って」。講師の掛け声が響き、体操する女性たちの笑顔に汗がにじむ。ここ千葉県柏市のマンション「パークシティ柏の葉キャンパス一番街」では、毎週金曜日、「みんな一緒にリズミング」というクラブ活動を行っている。
「知人ゼロ」から
参加者の多くはマンション住人。近藤緑さん(66)は2008年11月、群馬県から夫と移り住んできた。「近所づきあいのあった群馬と違って知人はゼロ。不安だったが、クラブのおかげで良い仲間に出会えた。土地を残してきたが帰るつもりはなくなった」と笑う。口コミで周辺住民も加入し、交流の輪は広がってきた。
住民交流には「仕掛け人」がいる。開発を手がけた三井不動産グループだ。「全体で約3000戸の新住人が増える予定。周辺住民を交えたコミュニティーづくりが必要と考えた」と同社。そこで運営費を負担し、地元の特定非営利活動法人(NPO法人)、NPO支援センターちばに住民交流を促す事務局を委託した。
現在は、子育てやダンスなど約20のクラブが活動中。地元農家らが出店する市場や住民による演奏会などイベントも多い。「今度はみんなで『歌声喫茶』のような交流会を開く。男性も引っ張り出したい」と近藤さんらは意気込む。
「隣近所とのコミュニケーションに肯定的な生活者が増加している」。野村総合研究所は09年の調査でこんな意識変化を指摘した。「隣近所の人とはお互いに干渉しない方がよい」という問いに対し、「そう思う」と答えた人が1997年は42・7%いたのに、09年は21・8%に減少。防犯・防災などの観点から地域社会が再評価されるなか、近所づきあいに前向きになってきた様子がうかがえる。
ただ、新しい住宅地やマンションで交流を始めるきっかけは案外少ない。「入居から1年もたつと近所に声はかけにくい」(マンションに住む65歳の主婦)と悩む人は多い。
そこで開発事業者が力を入れるのは、近所づきあいの「きっかけづくり」だ。野村不動産が開発中の住宅地「プラウドシーズン花小金井」(東京都小平市)は、多目的スペースや防災倉庫を備えたクラブハウスを設け、自治会やサークル活動を進める計画だ。「騒音などのトラブルも顔見知りになり、関係を築いていれば紳士的に対応できる」と同社。
自治体もこれを後押しする。「コミュニティーをつくってほしい」。東京都港区は、超高層マンションが立ち並ぶ地区で自治組織をつくるよう開発事業者に求めた。理由は防災や防犯対策。「顔の見えない住人が急増することは望ましくない」(港区芝浦港南地区総合支所)
そこで三井不動産が支援し、09年10月に約3800世帯からなる「芝浦アイランド自治会」を設立。地元町会と情報交換しながら防災活動などに取り組む。
資産価値にも
自治会をつくったことで、住民主導の「地縁づくり」がうまくいく例も。千葉県成田市の住宅地「成田はなのき台」は06年の分譲開始以来、売り主の細田工務店(東京都杉並区)などが自治会設立を働きかけてきた。今は自治会を中心に公園の草刈りや祭り、食事会などの交流が盛んだ。自治会主催で年2回、新たに移り住んできた人を歓迎するパーティーも開く。
「近隣に高齢化する地域が目立つなか、ここは子どもが年々増えている。新住民を呼び込み続けることが、町や住宅の資産価値の維持にもつながる」。成田はなのき台自治会の塚越恒徳会長(64)はこう話す。
こうした動きを、中央大学大学院の細野助博教授(都市政策)は「過去のニュータウンの反省を生かしている」と評価する。1960〜70年代に建設された団地ではプライバシーが重視され、近所づきあいが盛んではなかった。近隣関係を持たない高齢者が増え、孤独死などの問題を抱えてしまうことにつながった。
「コミュニティーをつくるのは住み始めが肝心。交流のきっかけを事業者が手助けするのは望ましい。あとは住民が高齢化していくなか、若い人と高齢者の世代間交流をどう促すかが課題だろう」と細野教授は見ていた。
地域の災害対策にも一役
「マンションは設備の豪華さによる競争が一段落し、コミュニティーに配慮した物件が増え始めた」と、リクルートの住宅サイト「SUUMO(スーモ)」の西村里香編集長は指摘する。
例えば、東急不動産などが分譲する「ブランズ・ジオ等々力」(東京都世田谷区)は、災害時に備えて「かまどベンチ」や非常用のマンホールトイレを設けた。これらは周辺住民も使える。「マンション住人も地域に誇れる部分になると思う」と同社。
大阪市では2009年から「防災力強化マンション認定制度」を設けた。被災時に防災設備や施設を開放するもので、現在6件が認定済みだ。最近は一定規模以上のマンションを建設する際、敷地内に保育園などを建設するよう求める自治体もある。大規模なマンションほど住人の数は多く、地域コミュニティーへの影響は無視できない。一種の「公共財」として地域がとらえ始めたようだ。










