セキュリティ事情最前線 〜総合防犯設備士に聞く
<第5回>利便性と防犯性の両立で、理想のセキュリティを追求 【美和ロック 斉藤正邦氏】
美和ロック株式会社
システム機器企画開発部企画課 課長代理
総合防犯設備士 第04-0100号
斉藤 正邦 氏
警戒線を一つ一つ守っていくのがカギメーカーとしての務め
美和ロック 斉藤 正邦 氏
美和ロックは、カギの専門メーカーとしてドア周りにおけるガードを得意とし、そこを起点としたガードシステムの構築でセキュリティのボトムアップを推進している。ビル全体を管理する大規模なシステムより、どちらかというと住宅やマンションのセキュリティを得意としている。
「防犯設備の基本的な考え方である『警戒線』を一つ一つ的確に守っていくには、当社のようなメーカーでなければ難しいでしょう」と語る斉藤氏は、日本防犯設備協会の施工基準委員会委員長も務めている。この委員会に参加したことが総合防犯設備士資格を取得するきっかけになったといい、監視とガードの違いを十分認識した上での提案を続けている。
ヒアリングをしっかり行い、「想定される脅威は何か」「どのようなリスクがあるか」「何を守りたいか」などを明確にし、段階的に構築していくことが必要という。「セキュリティは前に出てはいけないと思いますが、ヒアリングなしには何も進みません。その上で、利用者が意識しなくても使える仕組みこそ、理想的なセキュリティではないでしょうか」と語る。
運用サービスのノウハウをパッケージ化
その理想に一歩近づけたのが、配管配線がなく単独で稼働する、賃貸マンション向けの電池錠「FKLシリーズ」だ。FeliCaを採用し、タッチ&ゴーの改札と同じように、リーダー部にカードをかざすだけで認証され、スマートな操作性を実現した。しかも、運用サービスのノウハウをサービスパッケージ化し、カギ管理の手間とコストを大幅に削減できる。
賃貸マンションなどの管理会社は、入居者が代わるたびにカードを発行することになるが、このシステムでは従来からあるカード発行機などのハードウエアやソフトウエアを使用せず、美和ロックのサーバーにアクセスするだけでカード発行できるようにした点が特筆できる。セキュリティが守られるだけでなく、高額なカード発行機も不要だ。
空室時に業者が入って内装工事をしたり、部屋の見学をするときにも、ホテルのような時限カードを発行することが簡単にできるので、カギの紛失などによるリスクも回避できるという。
運用中にカードを紛失したときも、カードを再発行して以前のカードを使用不能にできるだけでなく、退居者のカードを使えなくすることも簡単な操作でできるため、不正使用が回避でき安心で安全性の高いセキュリティが実現できる。しかも、このシステムがすべてオフラインで独立させているのが同社の強みで、管理会社と部屋がつながっていない状態でも、キー発行に対応できる点が大きなメリットとなっている。
また、このシステムは、入退居の際のシリンダー交換にかかるコストと人手が削減できると注目され、ランニングコストを比較すると数年後にはシリンダー錠に取って代わると考えられている。賃貸住宅だけではなく社員寮など、出入りの多い所へも用途が広がっているシステムだ。
電子カードの利用で、利便性と防犯性能を向上
同社では、住宅向け「FKL」だけではなくオフィス向けの「FKALT」という製品も提供している。「FKALT」は、美和ロックオリジナルのフォーマットに加え、Edy番号やIDmなどさまざまなフォーマットにも対応し、最大100IDまで登録できる。もちろんオフィス用途として、レイアウトが変わっても取り付けやすく、ログの取得やタイムコントロールも可能だ。
さらにはカードキー利用の発展系として、同社の製品には携帯電話をカギとして使用するキーモバイルシステム「KEYMO(キーモ)」がある。これは、おサイフケータイを鍵として使用するシステムで、同社の電池錠「FKL」「FKALT」や「iEL」といった電気錠システムへの展開が可能だ。
普段から持ち歩いている携帯電話を鍵として利用できるという利便性と、セキュリティモードという独自の防犯機能もあり、セキュリティ性もしっかり確保される。「セキュリティを高めながら運用面での利便性も上げていかなければならないのが難しいところです」と斉藤氏が語るように、使いやすいことがセキュリティの確保に直接結びつくようだ。

FKLによるカードキー管理方式で入退室時のカギ管理がスムーズに
セキュリティポリシーの遵守がドア周りの安心ガードを提供

前述の 「FKL」「FKALT」(リーダ一体型電池錠)には鍵穴も装備している。これは電源系統が機能しなくなっても締め出されるという事態を回避するためだ。
また、カードキーのID管理では、「鍵は守らなければならない一定のラインがある」との考えから、KEYMOで利用される携帯IDを機種変更時に移すことを、あえてできないようにしている。同社の安全・安心を守る頑固なまでのポリシー遵守の姿勢が表れている。
「ただ利便性のみを考えているだけでは、根本的なセキュリティは確保できないと考えています」という斉藤氏は、「セキュリティは、単体製品やシステムだけで構築しては「木を見て、森を見ず」になってしまい、十分ではありません。必要なセキュリティ性能を永続させるためには「木を見て、森も見て」、つまりは大きな意味で地域の目や環境も重要な要素であると考えます。そのためにも、コミュニケーションの確立と適切な防犯設備が組み合わされることが大切だと思います」と説く。 (終)
- 次の記事
- <第6回>東京の安全・安心なまちづくりに貢献する防犯対策のプロ集団【東京都セキュリティ促進協力会 高尾祐之氏】
- 前の記事
- <第4回> 的確なヒアリングと系統立てたセキュリティ提案で、信頼を獲得 【日本ビクター 新木健治氏】
プロフィール
【インタビュアー】西山 恵造(有限会社 センス・アンド・フォース 代表)
オーディオ・ビデオ機器、計測制御機器、コンピュータ周辺機器などを製造販売する電気機器メーカーの宣伝部にコピーライターとして勤務。計測制御機器やコンピュータ機器に関するパンフレット、広告等のコピーを制作する際に接した、産業機器関連に興味を持つ。1995年に独立後も、IT関連と産業機器関連のコピーおよび原稿制作等に関わりを持ち、2005〜2006年には「震災時帰宅支援マップ」(昭文社刊)の原稿制作にも携わる。セキュリティ分野では、ネットワークセキュリティと防犯のいずれにも携わっており、2007年からはセキュリティ雑誌への記事掲載も担当した。現在、防犯だけでなく防災にも興味を持ち、2008年に「防災士」と「防犯設備士」の資格を取得。











