トップ > SECURITY SHOW > 連載コラム > 「a&s JAPAN」最新号より > スーパーマーケットのセキュリティ事情(2)

「a&s JAPAN」最新号より

スーパーマーケットのセキュリティ事情(2)

2010年04月22日 このエントリーをはてなブックマークに追加

RSSでこのブログを購読する

関西スーパーマーケットの事例

 ここで、関西圏で営業するあるスーパーマーケットの事例から、店舗運営管理への応用を少し具体的に紹介していきたい。同一県内に47店舗を展開し、パート・アルバイトを含め従業員数約2,000名を有する中堅スーパーマーケットの事例だ。

 同社は新店舗の出店を機にIPシステムの導入に踏み切った。これまで、アナログの監視システムで長く運営してきたが、カメラを店舗運営管理に応用したいと考えていたという。やはり決め手になったのは、IPによる高精細な映像と遠隔監視だった。

 従来のアナログシステムは解像度が低く、陳列棚に並ぶ良く似た商品の区別もつかない状況であり、制御できるカメラの台数にも制約があった。このため、店舗の隅々までカバーすることは不可能だった。しかし、新システムでは64台のカメラ接続をして、店内をくまなく見られるようになった。

 実用面では、本社にいながらにして店舗の生鮮食品の鮮度の様子をある程度視認できるようになり、適切な指示を現場に出せるようになった。また、総菜の量目についても、大きいパックの売れ行きが悪いと判断すれば、もっと小分けにして売るようにするなどの指示が出せる。

 また、在庫管理の考え方も変化したという。例えば、陳列棚の状態を詳しく見極められるようになったことで、POSデータだけでは判断できなかった詳細な在庫の把握が可能になり、その時々に応じた品揃えが可能になった。

 さらに、陳列棚が品薄なのを本社で発見した場合、直接店舗に連絡して、売れ行きが悪いのか、発注漏れなのかを確認。その上で、仕入れ担当者が補充や代替品の仕入れなどの対策を講じる。一元化した本社の指示で組織的に動くことで、系列店から商品を融通したり、仕入れ先から追加の商品を納入してもらうなどの迅速な対応がとれるようになったという。

導入時の留意点

 監視カメラの映像を店舗運営管理に応用する際に新しい試みで留意するポイントは、「カメラの取り付け位置と求められるカメラの種類が異なるという点だ」と店舗プランニング入江氏は指摘し、導入時に時間をかけて事前に良く検討することの重要性を語る。

 監視の世界ではある程度マクロな視点から全体を見通すことが必要とされていたが、運営管理へ適用する場合には少し異なる。つまり、あらゆる区域に画角を瞬時に設定し、高精細な映像としてカバーできることが条件になり、必然的にカメラ台数も増えることになる。

 このような店舗運営管理対策に有用なのがPTZ(パン/チルト/ズーム)カメラだ。キヤノンマーケティングジャパン内田氏は「まず高品質な映像が最大のポイントになる。商品にズームして陳列状態を把握したり、プライスカードなどがしっかりと判読できる精度が必要不可欠」と指摘する。

 また、ネットカムシステムズ金延氏も「店舗運営管理にはPTZカメラが不可欠だが、まだスーパーマーケットの現場での認知度は低く、導入されているのはカメラ全体の10~20%程度ではないか」と推定している。

写真:キヤノンマーケティングジャパン 喜多氏
キヤノンマーケティングジャパン
オフィスデバイス商品企画本部
ビジネス周辺機器商品企画部
ネットワークカメラ商品企画課
喜多恭央

 特にPTZカメラは高速になるほどピント合わせが難しくなると言われているが、キヤノンマーケティングジャパンオフィスデバイス商品企画本部ビジネス周辺機器商品企画部ネットワークカメラ商品企画課の喜多恭央氏は「0.2ルクスという低照度にも対応するオートフォーカス機能を搭載したカメラを純正レンズと映像圧縮通信エンジンと組み合せて高度な映像品質を実現している」との自信を見せている。

 さらに、録画ソフトウエアも重要だ。PTZカメラのライブ映像と録画映像を1つのモニター上に表示し、有機的な活用を図ることが必要とされる。

 また、ユーザーインターフェースの部分も導入時の決め手になる。スーパーマーケットの現場では、専門の操作担当者を配する余裕がないため、一般社員が操作の担当者となる。このため、カメラのパン/チルト/ズーム操作なども直感的に操作できることが重要となる。キヤノンマーケティングジャパンでは、これらの要件を満たすシステムとしてソリューション提案をしているという。

 今後はこの店舗運営管理への応用が増えると今回取材した各社は予想しているが、スーパーマーケットでは、総務部門はセキュリティ中心、店舗企画部門では管理中心と、それぞれの立場で微妙に求めるものが食い違うため、社内の意思統一をどのように図っていくかがポイントになりそうだ。いずれにしても、この新しい動向の今後に注目すべきだろう。

その他の新機軸

 スーパーマーケットを取り巻く厳しい競争環境、監視システムの現状、そして新しい店舗運営管理用途の台頭などを記述してきたが、ここでその他の新機軸についても紹介する。

 近年スーパーマーケットでは、郊外型の大規模店の出店が増えているが、そこで問題となるのが駐車場のセキュリティ対策と管理対策だ。大型店になればなるほど駐車場のスペースは広大となり、駐車台数も増えるため様々なトラブルが発生する。

 セキュリティ関連としては、車内の荷物の置き引きや物損事故、また、管理対策としては、違法駐車の把握などがある。この分野のソリューションとして期待されるのがナンバー認識だ。駐車場の入出庫の際に自動車のナンバープレートを読み取り記録する。この場合、IPしかもメガピクセルレベルの解像度が必要とされており、事後検証ばかりでなく、他のシステムと連繋して顧客サービスに応用することも可能だ。

 また、RFIDタグに代表されるEAS(電子商品監視システム)の動向だが、欧米での普及に比べて日本では導入が遅れている。スーパーマーケットは取り扱う商品が数万点以上と膨大なため、費用対効果の点からも導入に至らないケースが多いという。しかし、ネットカムシステムズ金延氏が語っているように「RFIDタグをショッピングカートに付けて、カートの位置情報や稼働情報を把握しているスーパーもある」のも事実。今後のさらなる進展が期待される。

 さらに、監視カメラシステムに付与されるインテリジェント機能を応用した客層管理や属性把握の自動化も大きな注目を集めている。曜日別や時間帯別に、年代層や性別などの顧客属性を把握することができれば、特売コーナーや目玉コーナーなどを柔軟に配置することができ、売り上げの増加に貢献する。システムとしての完成度や検知精度の向上が待たれる。

 さて、現在の時流として「アナログは安いという概念はもはや過去のものになりつつある。カメラやNAS(ネットワーク上の録画サーバー)などIPの世界の費用対効果は飛躍的に進歩している」とシステム・ケイ安部氏が語っていることは非常に興味深い。より安く柔軟なシステム構成をユーザーに提供できる時代はすぐそこまでやってきているようだ。

将来の展望

 現在セキュリティの分野では、ONVIFやPSIAなど世界規模での規格統一化の進展、動画像の高圧縮技術H.264の普及、IP機器やシステムのコストパフォーマンス改善、さらに周辺インフラも飛躍的に整ってきた。今後の課題はどこにあるのか、各社の市場展望を聞いた。

 まず、店舗プランニング入江氏は「アナログ全盛のスーパーマーケットにも、IP化の流れは必ずやってくる。そして高解像度に対する要求もさらに強くなっていくだろう。1.3メガピクセルカメラを主力に、スーパーマーケットのIP化需要にしっかりと応えていきたい」との抱負を述べる。さらに同氏は「ネット社会の便利さで業者をホームページなどで選定するユーザーが増えているが、それだけの情報では本当の力量がわからないので慎重に」との苦言も付け加えている。

 また、ネットカムシステムズ金延氏は「H.264でフルHD対応、さらに30フレーム/秒を録画できる最新のソフトウエアを近日中に市場投入する予定」と語り、メガ化HD化への対応に備えている。

 これまで述べてきたように、スーパーマーケットはいま、IP化によるさらなる効率的な監視システムの構築と店舗運営管理への応用を模索している。景気の長期的な低迷が続く中、本当に価値ある投資となるかが問われていると言えそうだ。

 システム・ケイ安部氏は「本社からの遠隔一元管理やカメラのIP化、H.264対応、長期間録画などユーザーの要望はしっかりと把握している。それに合った特長あるカメラを選択し、ソフトウエア、サーバー、ストレージなどで最適に運用できるシステムを幅広く提案していきたい」との意欲を語る。また、セキュリティに留まらず、動線管理、滞留把握などマーケティング需要も掘り起こしていくとの方針だ。

 キヤノンマーケティングジャパン喜多氏は「今後ともスーパーマーケットのソリューション提案を意欲的に展開していく。ネットワークカメラと録画ソフトウエアの組み合せで、ユーザーの課題や問題点をしっかりと把握し、店舗の効率化、業務改善、生産性の向上に貢献したい」と締めくくる。

 守るシステムから売るシステムへ。監視システムは新たな付加価値を持つことができるように変われるか。「いつ波が来るのか、市場ニーズをしっかりとつかみ取るタイミングが勝負」キヤノンマーケティングジャパン内田氏の言葉が印象的だ。

(終)


次の記事
スーパーマーケットのセキュリティ事情(1)
前の記事
アナログからIPネットワークシステムへ移行の過渡期(1)

 プロフィール

「a&s JAPAN」最新号より

a&s JAPANはご自宅や職場にお届けするセキュリティ総合専門誌です。ご購読は一切無料。ご興味のある方、a&s JAPANオンライン無料購読にてご登録ください。

街づくり・流通ルネサンス会場全体図

LED Next Stage フランチャイズ・ショー JAPAN SHOP 建築・建材展 リテールテック JAPAN NFC & Smart WORLD SECURITY SHOW LED Next Stage JAPAN SHOP フランチャイズ・ショー リテールテック JAPAN 建築・建材展 NFC & Smart WORLD SECURITY SHOW

街づくり・流通ルネサンスfor smartphoneはこちら

街づくり・流通ルネサンスモバイルはこちら

RSSで展示会情報を購読する