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「a&s JAPAN」最新号より

スーパーマーケットのセキュリティ事情(1)

2010年04月22日 このエントリーをはてなブックマークに追加

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a&s JAPAN

 業績が伸び悩んでいるとは言え小売業を牽引しているスーパーマーケット。その総売上高は、コンビニエンスストアや百貨店のそれを抑えてトップに君臨している。しかし、華やかな数字の裏に潜むその実像は「他店より1円でも安く」という熾烈な競争意識と絶え間のない企業努力によって支えられているのが現状だ。スーパーマーケットの最新事情を取材した。
【a&s JAPAN 2010年3月号(No.15)より】

大川 鮎太郎

厳しい経営環境

 私たちの日々の暮らしに欠くことができないスーパーマーケット。警視庁の資料によると、その売り上げに比例して、万引き(内引き)によるロスも、コンビニエンスストアや百貨店を抑えて小売業のワーストワンになっている。

 スーパーマーケットの歴史を振り返ると、日本におけるセルフ販売方式の草分けであり、店舗の大型化、チェーン化を強力に推進してきた。高いロス率の多さは、皮肉なことに、このセルフ販売方式に起因しているのだが、コンパクトに売場がまとまって人の眼が行き届きやすいコンビニエンスストアなどに比べると、売場の広さや構造上どうしてもロス率が高くなる。

 特に近年では店舗の複合化が加速し、監視カメラの普及にもかかわらず、期待される成果を挙げるに至っていない。

 スーパーマーケットやショッピングモールの監視カメラシステムの構築に豊富な実績を持つシステム・ケイのネットワークシステム事業本部本部長安部芳典氏も「スーパーマーケットでは、100%監視カメラが設置されていると言っても過言ではない。ただし、実際は事後検証としての映像証拠にはなるものの、リアルタイム性をいかしたものではない」とその現状を語る。

(左)システム・ケイ 安部氏 (右)店舗プランニング 入江氏
(左)システム・ケイ ネットワークシステム 事業本部 安部芳典
(右)店舗プラニング セキュリティ事業部 課長 入江正明

 モニターの前に専門の監視要員を配して、売場と連携して現場を押さえるといったドラマのような展開は、日々のスーパーマーケットでは、まず不可能に近い。

 また、韓国CNB社の日本総代理店である店舗プランニングセキュリティ事業部課長で防犯設備士の入江正明氏も「最近テレビ番組などで紹介される万引きGメンと契約しているスーパーマーケットでも費用が高く導入率は低い」と語り、監視カメラによる直接的な「万引き防止成果」の難しさに言及している。

抑止効果とクレーム対応

写真:ネットカムシステムズ 金延氏
ネットカムシステムズ 代表取締役
金延純男

 しかし、監視カメラシステムがある一定の抑止効果を発揮していることは疑いもない事実である。監視カメラシステムのベンダーとして数多くの経験を有するネットカムシステムズ代表取締役の金延純男氏も「スーパーマーケットの直面する課題として深刻なのは内引き(従業員の不正)であるケースが多い。バックヤードなどへの監視カメラの設置は、大きな抑止効果を発揮する」と語り、内部統制の強化に貢献することを挙げている。

 また、客商売である以上、スーパーマーケットにはクレーム対応の的確さが要求されている。特にデリケートな問題なのが、レジでの釣り銭トラブルだ。近年では、POSレジやオートレジなど、トラブルを未然に防ぐタイプのレジの導入も進んでいるが、レジ周りに設置した監視カメラの映像も大きな証拠として活用される。レジのデータと映像、さらにはレジ係の音声までをリンクして検証できるシステムを構築しているスーパーマーケットもある。

約70~80%がアナログシステム

写真:キヤノンマーケティングジャパン 内田氏
キヤノンマーケティングジャパン
オフィスデバイス商品企画本部
ビジネス周辺機器商品企画部
ネットワークカメラ商品企画課 チーフ
内田拓一

 さて、スーパーマーケットでは早くから監視カメラシステムの導入が進んでいたため、セキュリティ資産としてアナログ比率が高くなっている。ネットカムシステムズ金延氏は「もちろん正確な数字はつかんでいないが、70%以上がアナログシステムではないか」との感触を述べている。

 また、キヤノンマーケティングジャパンのオフィスデバイス商品企画本部ビジネス周辺機器商品企画部ネットワークカメラ商品企画課チーフ内田拓一氏も「IP化は20%以下程度だと認識している。まだ80%近くがアナログというのが現状ではないか」と推定している。

 さらに「監視カメラ自体は必要不可欠なものとして認識されてはきたが、それがアナログかIPか、ということはユーザーサイドではほとんど関心がなかった」というシステム・ケイ安部氏の指摘や「IPの認知度は残念ながら低い、パソコンに取り付けるWebカメラと誤解されるケースも多かった」という店舗プランニング入江氏の言葉が市場の実情を示している。

標準的なシステム構成

 店舗の規模や立地条件などによってその内容は異なるが、スーパーマーケットにおける標準的な監視カメラのシステム構成はどのようになるのか。チェーンストアで店舗数が50~350店舗をモデルにすると「いわゆる中;大型店の1店舗当たりでカメラ台数は24~32台が基本、固定のボックス型やドーム型タイプが主流」とシステム・ケイ安部氏は語る。昨年、本誌が取材したコンビニエンスストアの標準カメラ台数16~24台と比較すると意外と少ない数字のように感じられる。

 良く眼が行き届くコンビニエンスストアにカメラが多く、売場が広く死角が多くなりがちなスーパーマーケットで少ないという実情だ。このあたりにも、スーパーマーケットにおける監視システム構築の有効性に対する疑問や悩み、費用対効果の問題が浮き彫りになっている。

 また、監視カメラを含むセキュリティ設備の導入に際しては、契約する警備会社のルートを通しての採用が多く、システム・ケイ安部氏も「まずコストありきで、柔軟なシステム提案ができる経営環境ではない。市場としては、金額的にかなり厳しい」と現状を指摘する。

 さらに、店舗プランニング入江氏も「警備会社はもちろん、電気工事会社、内装業者、什器会社などのコネクションルートが多く、システム導入に際しての基本理念が欠如している」と警鐘を鳴らしている。もちろん、ここで両氏が指摘したのは、これまでの一般論であり、少しずつではあるが変化の兆しが見えてきている。

 それが顕著に現れているのが、前述したレジ周りだ。釣り銭トラブルや接客対応の重要ポイントとして位置づけられており、IP化はもちろんのこと、メガ化やHD化を導入するスーパーマーケットが増えてきている。やはり、札券種をしっかりと識別できる高解像度と本社からの遠隔監視やクレーム対応へのリアルタイムかつ具体的な指示ができる点などが評価されている。

 また、売場では高倍率かつ高速のPTZカメラに対するニーズも増えてきている。

店舗運営管理の領域へ

 さて、ロスを極力抑えるという切実な要望の一方で、いま注目されるのが店舗運営管理への展開だ。これは、監視カメラシステムをセキュリティだけに活用するのではなく、積極的に運営管理に応用しようという試みだ。

 これまでのアナログシステムではできなかったIPの高解像度、遠隔監視(指示)、拡張性を最大限に発揮し、プラスアルファの付加価値を監視カメラシステムに付与するものとして注目される。

 すでにキヤノンマーケティングジャパンでは「セキュリティシステム」という名称ではなく「モニタリング&レコーディングシステム」として、新たな映像活用(ライブ映像と録画映像)のソリューションを提案し成果を挙げている。

 例えば、チェーンストアなどの場合、これまでスーパーバイザーなどが各店舗やフロアの様子を見て回っていたが、IPカメラならば本部から遠隔で映像を確認できるため、移動に伴うコスト削減や時間の効率化を実現した。

 また、映像のみならず音声(音声対応機種)での状況確認ができるため、的確な指示や接客マナーの統一が図れる。

 さらに、録画映像の解析を通じて、POSデータでは分からなかった「お客様がなぜ買わなかったのか」の理由を検証し、運営管理にいかすといった手法だ。

 キヤノンマーケティングジャパン内田氏も「スーパーマーケットなどは、日々生鮮食品を売場裏のバックヤードで加工して販売している。食の安全は消費者にとっても最大の関心事であり、信用の失墜は店舗全体の印象に関わる」として、ネットワークカメラ映像を介しての要チェックポイントの把握や本部からのきめ細かい指示などは有効だと力説する。

 さらに、システム・ケイ安部氏も「店舗の基本的なマーケティングデータとしてピープルカウントの自動化も有効な手段だ」と説明する。これは店舗のすべての入口の内部に映像上の仮想ラインを引き、そこを通過する来店客の数を自動計数する機能。IPカメラとサーバーを活用し、その日の時間帯別(1時間ごとや午前と午後など)、1週間の曜日別などのデータを瞬時にエクセルデータとして出力することが可能だという。

 また、今後のマーケティング応用としては、映像による来店客の動線解析や滞留把握(ホットスポット)に基づき、売場の構成や売場の改善などに役立てることを検討している。

(「スーパーマーケットのセキュリティ事情(2)」へつづく)

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