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「a&s JAPAN」最新号より

アナログからIPネットワークシステムへ移行の過渡期(2)

2010年03月18日 このエントリーをはてなブックマークに追加

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IP移行時の注意点

ビジュアルシステムオサダ 長田氏
ビジュアルシステムオサダ 代表取締役 
長田重五

 IPへ移行する際には、既存のアナログ環境からの変化についても想定しておく必要がある。ネットカムシステムズ金延氏は「既存の中~大規模アナログシステムの場合、ジョイスティックコントローラーやテンキーなどが装備されていることが多いが、IPシステムの場合、パソコン等からマウスかキーボード操作となることが多い。新旧システムで使い勝手を変えたくないと望むユーザーもいる」と語る。パナソニックも、「既存システムとの親和性からアナログを選択されるユーザーもいる」とコメントする。同社によれば、使い勝手を変えたくないという場合に、エンコーダーなどを用いたハイブリッドソリューションによるIPへの移行を選択するユーザーも着実に増加しているそうだ。また、「システム規模が大きいと、エンコーダーやDVRと、サーバーなどを組み合わせるケースが多く、小規模だとハイブリッドDVRや、すべての機器をIP化させる場合が多いようだ」と付け加える。IP監視カメラシステムのコンサルティングや販売を行うビジュアルシステムオサダ代表取締役の長田重五氏も「ユーザーからの問い合わせで、多いのは、カメラについてではなく、PCの操作方法についてだ」と語る。特にPCに不慣れな人が操作することが多い環境では、IP環境への移行がストレスにならないようジョイスティックを採用したり、PCではなくNVRなどの専用機を検討する必要もある。

 次に、回線について詳しく説明する。施設内に既設のPCネットワーク用のLANケーブルを利用することも可能だが、通常業務で利用しているネットワークを妨害しないようにすることが大切だ。ビジュアルシステムオサダ長田氏は、「LAN回線は安価に敷設できるので、PC用と監視用は混在させず、別途敷設したほうがよい」と語る。デジタルマックスジャパン遠山氏も「コストを安くしたいという理由で既存LAN回線を流用しようとすると、帯域を絞る必要が出てくる。そうなるとVGAサイズの映像で妥協することになり、見かけ上アナログと変わらないシステムとなってしまう」と批評する。

 こうした事情もあり、IPに移行する場合も、ある程度の期間、テスト導入を行ってからの場合が多い。同社川辺氏は「数台規模のテスト導入を一定期間行うなど、IPシステムを十分に検証するアナログユーザーは多い」と指摘している。

デジタルにすれば何でも良くなるのか?

 ところでアナログからデジタルへの変更で、最もその効果がわかりやすいのが、監視カメラの映像である。これまでのアナログ放送と、地上デジタルテレビ放送の画質の違いは歴然であり、監視カメラでも同様だ。しかし、途中のインフラ部分をIPネットワークとビデオエンコーダーを使ってデジタルに変更しただけの場合は、アナログカメラからのノイズは低減するが、見ている映像の画質にほとんど変わりはない。アクシスコミュニケーションズ技術コンサルティング部シニアコンサルタントの奥本昇功氏は、「デジタル化になったことで何もかも良くなると思われることがあるが、アナログカメラを使用し続ける場合は、劇的に画質が良くなるわけではない」と指摘した。

アクシスコミュニケーションズ 奥本氏
アクシスコミュニケーションズ
技術コンサルティング部 シニアコンサルタント
奥本昇功

 また、デジタル化した際に、帯域制限などの理由で、フレームレートに制限が出ることもある。「今までアナログのフルフレームレートで映像を見ることができたからといって、必ずしもデジタルで同じ環境が構築できるわけではない」と奥本氏は指摘する。デジタルマックスジャパン遠山氏も、「画質が良く、100台のカメラを接続できるといっても、回線がボトルネックだったりして、実現できないこともある」と語る。

 デジタルの場合、遠隔地でも映像を確認ができるメリットがある。例えば、チェーン展開している小売店などでは、店舗で録画とモニタリングを行いつつ、本社でもモニタリングを行いたいという要望がある。遠山氏は「店舗ごとに見られているHD画質の映像を、本社でも見たいと要望されるユーザーは多い。物理的に不可能ではないが、各店舗からの映像が集まる本社の回線がよほど太くないと難しい。回線を太くするには、月額十数万といったランニングコストを払う必要があるが、そうした運用面でのことまで考えなくてはならない」と語る。

IP化にあたって機器選択のポイント

 次に、IP化する際の製品選択のポイントについて各社に聞いた。まずはIPカメラについては、清水建設松崎氏は「コストも重要だが、信頼できるメーカーであることが第一条件。監視システムの施工主の立場から考えると、メーカーが倒産してしまうとサポートなどの際にユーザーに迷惑をかけてしまうのは避けたい。安く、機能が高いからといって、飛びつくことはない」とコメントする。移行時には、アナログ出力ができるIPカメラを選択する方法もある。続いて、ビジュアルシステムオサダ長田氏は、「画質などのスペックも大切だが、直感的にわからない設定画面であることも多い。カメラ検討時にはそうした操作性も検討したほうがよい」と語る。

 また、ビデオエンコーダー選択時のポイントは、録画用とライブ映像用に、フレームレートや画像サイズの異なったマルチストリームの対応があげられる。アクシスコミュニケーションズ奥本氏は「古いモデルだと、同じ属性のシングルストリームしか生成できず、例えばライブ映像のためのフルフレームレート映像を、録画でも同様に使用する必要があり、ストレージを圧迫することがあった。またその逆に、ストレージのために、ライブ映像のフレームレートを下げる必要もあった」と述懐する。同社砂川氏も「映像は確認できるが、PTZ(パン/チルト/ズーム)コントロールができない、といったことがないよう選択する必要もある」と付け加える。その他、発熱の問題もある。デジタルマックスジャパン川辺氏は「ビデオエンコーダーは熱を発生するので、どの程度の熱か、熱が周囲に与える影響も確認しておく必要がある」と指摘する。

アナログよりIPで企業競争力を向上

 ローカルで録画し、画質も粗くてよいというなら、すぐにIP化をする必要はないかもしれない。しかしアナログカメラやDVRが故障した際、在庫がなかったり、サポートが打ち切られている可能性もある。耐用や償却期間の終了時に、思い切ってすべてをIP化するのが良いが、予算の都合もあり、そうできるとは限らない。その際には、ハイブリッドDVRやビデオエンコーダーなどを活用して、部分的にIP化していくことが大切だ。

 単純なコスト比較に走ってしまうかもしれないが、画像の高画質化や検索性の向上などによる非セキュリティ分野での活用による、売り上げや生産性の向上といったメリットも考慮して、移行を計画する必要があるだろう。

<参考資料>
IMSリサーチ、2010年の10大潮流を予測
IMSリサーチは、今年注目を集めそうな映像監視システムの潮流を発表した。
1.映像監視サービス(VSaaS)に注目し、多くの企業がVSaaSソリューションを発表する。
2.カメラ内蔵の記録機能が人気を集める。SDカードによるシステムがネットワークカメラで多く採用され、ユーザーはこの機能を大いに利用する。
3.サッカーワールドカップやオリンピックに向けて、ブラジルでのセキュリティ関連設備投資や社会基盤整備への投資が急激に増大する。
4.市場での競争の過熱、低価格製品の増化、企業の価格調整努力などによりネットワークカメラの価格が低下する。
5.映像内容解析(VCA)に検索機能を備えたシステムが次世代システムとなる。
6.吸収合併に加速がかかり、競争激化の年となる。それに伴い撤退企業が出現する。
7.HD解像カメラが大きな市場を作る。
8.H.264を採用したメガピクセルカメラやHD解像カメラ市場が拡大する。
9.オープンプラットフォームが継続して市場を席巻し、引き続きネットワークカメラへの移行を促す。またONVIFやPSIAなどのオープンプラットフォームがネットワークビデオ監視市場を盛り上げる。
10.映像管理ソフトウエア(VMS)の利便性が高まり、PSIMも機能性を高める。

(終)

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