「a&s JAPAN」最新号より
市場大変貌の予感 IPメガピクセルカメラの進化(2)
H.264は必須の圧縮技術に
言うまでもなく、メガピクセル特にHDの高画素化は情報量の増大を意味し、高効率の圧縮技術が不可欠となる。この要求にこたえるのがH.264である。今回取材した各社はH.264対応製品を市場投入している。
パナソニックでは「1.3メガピクセル画像を毎秒30枚(30fps)の送出が可能となり、独立した2種類のH.264画像を配信することもできる。最適な画像配信が選択できることで、システム全体でトータルの低ビットレート化に寄与する」と言う。特に、3.0メガピクセルでは最大で2,048(H)×1,536(V)の高解像度JPEG画像を送信することが可能になっている。
またアクシスコミュニケーションズでは、米国の放送規格SMPTEに準拠したHDTV化を推進。 2メガピクセル相当の1,920(H)×1,080(V)、1メガピクセル相当の1,280(H)×720(V)の高解像度JPEG画像をH.264やMJPEGストリームで毎秒30枚(30fps)の送出を可能にしている。
同じくHDTV化を志向するソニーは、HD720pに対応したPTZカメラを発売。アスペクト比が16:9の画像をH.264やMPEG-4ストリームで毎秒30枚(30fps)配信することが可能だ。
さらに、フルHD化の推進を掲げる三洋電機は、前述の6機種全モデルでH.264圧縮によるフルHD解像度1,920(H)×1,080(V)を毎秒30枚(30fps)の送出ができる。また、JPEG圧縮の場合、最大で400万画素の高解像度2,288(H)×1,712(V)に対応している。
いずれにしても、高画素化は必然的に高圧縮技術を要求しているため、H.264の普及が業界成長に大きく寄与することは間違いない。
メガピクセル化、HD化の導入障壁
ここでこれまでの導入障壁を見てみる。製品価格や製品の信頼性、設置施工費用やシステム構築、そしてネットワーク設計など、山積している問題があることは事実である。これらの問題はいま大きく改善しつつある。しかし、これで障壁が排除できるほど話は簡単ではない。

IPメガピクセルカメラ導入時の障壁
三洋電機デジタルシステムカンパニーDI事業部DS商品部DS国内販売担当部長の堂村龍明氏は「これまでの高画質は本当にユーザーニーズにこたえていたのか」という疑問を呈している。これは、アナログ通常画質からデジタル画質へとIPの世界は変貌を遂げているものの、フルHDのような圧倒的な高精細美をユーザーにインパクトを持って与えることができなかったことの指摘だ。さらに同氏は日本には欧米のような大きなディストリビューター(卸売業者)がない点も遠因の一つに挙げている。

(左)三洋電機 デジタルシステムカンパニー DI事業部 DS商品部 DS国内販売担当部長 堂村龍明氏
(右)ソニーマーケティング B2Bマーケティング部門 B2Bマーケティング2部
コミュニケーションプロダクツMK課 野村幸司氏
また、「ただ美しいだけでは意味がない。セキュリティとしての高画質をしっかりと追求することが大切だ」とするソニーマーケティングB2Bマーケティング部門B2Bマーケティング2部コミュニケーションプロダクツMK課 野村幸司氏の指摘も興味深い。それは、いくら解像度が上がって画像が美しくなっても、セキュリティの分野では見たいものが見えなければ意味がない。その見たいものが暗部に潜んでいるか、逆光の中にあるケースもある。人間の眼で見えないものも映し出す圧倒的な描写力や補正機能が必要とされていることを示している。
監視カメラのメーカーやベンダーは、2010年にこの障壁を打破することができるのか。その動向に注目が集まる。
市場の潮流
今後の市場動向として、フルHD/HD出力の実現が注目されることは確実だ。これまで以上に「識別」が重要点となり、例としては、レジや金融機関での札券種、駅や空港などでの人物(顔)、自動車のナンバープレートなどの識別を挙げることができる。アンケートの回答結果では、各市場分野とも導入しているものの、小売り、金融機関、工場、交通などの回答が多かった。

日本国内のIPメガピクセルカメラが過半数を超える予想時期
また、今回取材した各社は監視用途でのインテリジェンス(高度処理)機能の強化を挙げた。例えば、動体検知や侵入検知、置き去りや持ち去りの検知、顔検出などで、これにより、検出精度の向上を実現して監視業務の効率化や自動化の推進を可能にする。
一方、ケーブルTV局で観光地の様子や交通状況を映像化し、放送やウェブ配信に利用する用途などにHD画質のネットワークカメラが望まれるケースも増えてきている。
さらに、マーケティング用として、ピープルカウント(来訪客の人数、性別や年齢層などの属性把握)や店内ホットスポット(滞留場所)の把握、社員教育やマナー研修などでの活用が今後ますます増え、映像と音声を活用した新しい需要も生まれてくる可能性がある。
そして、今年大きな注目を集めるのがオープン化の潮流だ。これまでデジタルネットワーク監視製品には共通規格がなかったため、異なるメーカーの製品・システム間の互換性が低く、互いに接続できないケースが多くあった。このため標準化の推進を目的にONVIFやPSIAが設立されたのは周知の通りである。数多くのメーカーのカメラやNVRの互換性を確保することで、ユーザーの機器選択の自由度がひろがり、柔軟性に富んだソリューションの構築が可能となる。今回取材したメーカー全社はONVIF対応を打ち出しており、今後対応製品を市場投入する考えだ。

標準化への取り組み
大変貌の可能性
H.264の普及や世界規模での規格統一、メガピクセル化やHD化の進化、周辺インフラの充実など、セキュリティを取り巻く環境は大きく進歩している。
エスエスユニットの内門氏は「H.264、ONVIFなどの規格統一、海外カメラ技術の飛躍的な進歩など環境は揃いつつある。海外の低コストで良いものを積極的に日本に紹介し、より良いソリューションを提供したい」と抱負を語る。同氏は「もちろん日本市場に合ったきめ細かいカスタマイズやサービスも重要」と付け加えることを忘れていない。
また、店舗プラニングの入江氏は「カメラだけが健闘しても市場は活性化しない。周辺機器の整備やコストダウンが必要で、その上で新たな市場を創出していくことも重要なポイント」と将来を見据えている。
アクシスコミュニケーションズの落合氏は「H.264を標準で実装し、最適な選択ができる幅広いバリエーションを用意してユーザーの要望にこたえていく。また、HDをキーワードに業界のフルデジタル化に大きく貢献したい」とネットワークカメラの草分け企業としての自負を語る。
海外メーカーは今もなお日本市場の規模と可能性に大きな魅力を感じている。2010年、海外各社がどのような展開をするのか注目したい。
一方、国内メーカーの市場展望はどうか。パナソニック(株)システムソリューションズ社とパナソニックコミュニケーションズ株式会社が合併し、2010年1月1日に新発足したパナソニック(株)システムネットワークス社のセキュリティビジネスユニット 事業企画チームの川添主任技師は、「今後、映像セキュリティ分野ではネットワーク化、インテリジェンス化、システム統合などがさらに進み、異業種参入でより多層化した市場が一気に形成される」と見る。また、「2010年は当社のi-Pro製品を中心にさらに高画質化を加速させ、より賢く進化したカメラと豊富なラインアップで世界中の様々なお客様のニーズにおこたえし、グローバルNO.1を目指す」と意気込む。

ソニー
B2Bソリューション事業本部 マーケティング部門
IPELAマーケティング部 MK課
マーケティングマネジャー
相澤康正氏
ソニーのB2Bソリューション事業本部マーケティング部門IPELAマーケティング部MK課マーケティングマネジャーの相澤康正氏は「デジタルの世界は移行が本格化すると、あっという間に移行が完了する」と過去のブラウン管から液晶への移行を例に、HD化の浸透を予測する。また「商談でも高ピクセル数よりもHDと表現した方が通りは良い」と語る。さらにソニーマーケティングの野村氏は、「今後、多数のHD製品を発表する予定があり、HDに軸足を置いてHDのNO.1を目指す」と意欲を示している。
また、三洋電機では主力を監視用途に置きつつも、積極的に異業種展開を図り、TV会議やバーコードの読み取り、情報カメラの分野への展開も視野に入れている。そして、ONVIF対応製品も今春発表を予定している。同社森川氏は「2010年は当社の全カメラの50%がHDになる。高画素化を追求し、フルHDで業界NO.1を目指す」と述べる。
くしくもNO.1宣言が重なった。またその他の有力企業も内にある考えは同じだろう。a&s JAPANのアンケート結果によると、18社の中に既に9社がHDカメラの販売・対応を予定している。また、2社は市場の流れによってHDカメラの販売や対応を取り組むことも分かった。実は、メガピクセル化とHD化を代表とする2010年の監視市場の大変貌は既に始まっているのかもしれない。 (終)
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