「a&s JAPAN」最新号より
市場大変貌の予感 IPメガピクセルカメラの進化(1)
セキュリティの世界では、H.264の普及、世界規模での規格統一化の動き、そして映像のメガピクセル化やハイビジョン(HD)化、周辺機器やインフラの充実など、方向性が明確になりつつある。これにより、アナログからIPへの移行が加速することが予想され、また地上デジタルの普及と相まって、高精細なデジタル映像がデファクト・スタンダードになってきた。2009年末、a&s JAPANでは、国内のメーカーおよびベンダー計18社にアンケート調査を行い回答を得た。本稿ではメガピクセルカメラの最新動向を紹介する。
【a&s JAPAN 2010年 1月号(No.14)より】
大川鮎太郎
CMOSセンサーの台頭
1年前になるが、a&s JAPAN 2009年1月号「高画質ネットワークカメラ」の取材時に、あるメーカーの方はこう述べていた。「CCDやCMOSセンサーにはそれぞれ利点がある。今後も個々の製品に合わせて最適なデバイスを選択して対応していく方針だ」。
この撮像素子に対する考え方は、特にメガピクセルカメラではわずか1年で大きく変貌を遂げている。それは、今回取材したメーカーの多くが、メガピクセルカメラの撮像素子については「CCDからCMOSへのほぼ完全な移行」を表明していることだ。
アクシスコミュニケーションズ社技術コンサルティング部長兼主席コンサルタントの落合大氏も「技術革新によってCMOSセンサーの課題とされてきた低照度対応力は飛躍的に進歩した。弊社のカメラではCMOSの採用が既に80%を超えている」と語る。

(左)アクシスコミュニケーションズ社 技術コンサルティング部長兼主席コンサルタント落合大氏
(右)三洋電機 デジタルシステムカンパニー DI事業部 DS商品部担当部長 森川成和氏
また、2009年10月にネットワーク対応全6機種カメラにフルHD、フルフレームを搭載して意欲的な市場展開を図った三洋電機デジタルシステムカンパニーDI事業部DS商品部担当部長の森川成和氏も「すでに100%CMOSへの移行を完了した。HD画質の実現にはCMOSセンサーが最適」と力説する。
さらに、ソニーB2Bソリューション事業本部B&P企画部門IVS商品企画部企画課プロダクトプランナーの渋井秀一氏も「CMOSセンサーの性能はすでにCCDに匹敵するレベルになっている。30fpsのフレームレートが高速に出せる能力をはじめ、様々な利点から今後の主力撮像素子として位置づけている」との見解を示している。

ソニー B2Bソリューション事業本部 B&P企画部門
IVS商品企画部 企画課
プロダクトプランナー
渋井秀一氏
CCDは高感度で信頼性も高く成熟が進んでいる。一方、CMOSはメガピクセルレベルの高画素数になると、データを取り込むスピードが速く、精度にも優れていると言われている。
その後の技術革新によりCMOSの感度が大幅に改善され、本来有していた高速性や量産化の容易さ、低消費電力や機器の小型化への貢献などの特長を本格的に発揮する時が到来したと言える。
現在、CCDでメガピクセルに対応しているパナソニックでも「CMOSセンサーの性能向上はしっかりと把握している。今後の重要な検討対象として位置づけている」との見解を示しており、今後の動向が注目される。
メガピクセルレンズの動向
高精細な映像を得るためにはレンズの性能が決め手となるが、メガピクセル専用レンズの市場シェアはまだまだ低いのが実情だ。また、監視用途では一眼レフデジタルカメラのように大口径レンズを採用することができないため、小さな口径で最高のパフォーマンスを発揮することが要求されている。
2009年実施したメガピクセル用レンズメーカーへの本誌調査でも、多くのレンズメーカーではカメラの主流を1.3メガピクセルと予想しているが、2メガピクセル以上はHDTV対応が1つの重要点としていた。また、ほとんどのメーカーがH.264対応のメガピクセルカメラを供給して普及に拍車をかけることで、本格的にメガピクセルレンズの市場が拡大すると予想していた。
昨年の後半から、この予想は現実のものとなりつつある。アクシスコミュニケーションズおよびソニーは大半の製品にメガピクセルレンズを採用。三洋電機やパナソニック、また他の企業もメガピクセルカメラにはメガピクセルレンズの搭載を推奨している。
元来、日本の光学系技術には定評があり、これまで海外に多くのメガピクセルレンズを輸出してきたが、日本市場が拡大しコストダウン化が進めば、今後メガピクセルレンズ搭載のカメラが増えていくことになる。
画像処理技術の成熟
さて、センサーから得た画像情報を高い精度で再現する画像処理技術の向上はどのようになっているのか。
2009年3.0メガピクセルネットワークカメラを発売したパナソニックでは「新開発CCDと独自の信号処理LSIにより、メガピクセルカメラで従来比128倍のダイナミックレンジを実現した」と胸を張り、明暗が混在したシーンでの視認性を飛躍的に向上させている。
また三洋電機では、これまでの高画質の動画技術の応用に加え、新開発の映像処理エンジンとネットワークエンジンの2つのエンジンを搭載している。これは従来のネットワークカメラが負荷の大きい映像処理とネットワーク処理とを1つのエンジンが実行していたのに対して、両者をそれぞれのエンジンが並列に実行する。その結果、同社森川氏は「映像処理能力の大幅なアップとネットワークへの負荷を低減させ、より高速で快適な動作環境を実現する」と語る。
これと対照的なのがアクシスコミュニケーションズだ。同社のカメラでは画像処理機能と画像圧縮機能、およびネットワーク機能を自社開発でASIC化して実装している。同社落合氏は「高精細な画像をHDで鮮明に撮影して、効率良く送るのがネットワークカメラでは肝要だ。そのためにASICによりワンチップ化している」と述べ、実装のチップに同社のこれまでの経験とノウハウを凝縮している。
また、ソニーのHDセキュリティカメラが持つ特長的な機能の一つである低照度時のノイズを除去する「動き適応型ノイズリダクション機能」も注目される。一般に時間軸を考慮したノイズリダクションの場合効果は大きいが、屋内駐車場などで利用すると動いている自動車はブレてしまう。しかし、「この機能なら、動きのある自動車も鮮明な映像で捉えることができる」と同社の渋井氏はその特長を語る。

現在の主要製品の画素数
その他の注目技術・機器

エスエスユニット 代表取締役
内門保典氏
台湾に本社を置くTOPCO社は、半導体、太陽電池から化学製品まで手がける総合(上場)企業で、セキュリティ分野では国内外の大手企業に向けて監視カメラをOEM/ODM供給しており、自社ブランド製品の開発・販売を目的としてMESSOA社を設立した。MESSOA社も既に世界50ヵ国以上の販売実績を誇る。エスエスユニットはMESSOA社の日本総代理店として2006年に設立された。既に1.3メガピクセルのモデルを日本市場に投入しているが、同社代表取締役内門保典氏は「海外カメラの技術は飛躍的に進歩している。日本市場では後発となるが、コスト的、品質的に最良のCCDやCMOSなどのセンサーをカメラの用途に合わせて採用して、世界トップブランドのメーカー数社にOEM/ODMしている経験を生かし、国内メーカーとの差別化を図ってシェア獲得を目指す」として、「2010年度中にIR、インテリジェント機能付き、またPTZのメガピクセルモデルを市場投入したい」との意向を示している。
メガピクセルカメラの映像を記録、再生し、アクセスコントロール等の大規模システムに発展させる集中映像管理ソフトウエアを搭載する最新のNVR等のシステム提案も販売に重要なファクターであると強調している。

店舗プラニング セキュリティ事業部 課長
入江正明氏
また、韓国CNB社の日本総代理である店舗プラニングのセキュリティ事業部課長の入江正明氏は「アナログからデジタルへの移行期にある日本市場では、既存インフラの活用と将来の拡張性をバランス良く考慮することが必要」と語り、CNB社のカメラにはアナログ出力が標準装備されている点を強調している。これを活用すると、例えばフランチャイズチェーン店の場合、現場では安価なDVRでアナログ録画し、本部側ではIPを利用した再生や録画が可能となる。また「音声の双方向通信が可能なモデルもあり、映像と音声の新しい需要に期待している」と述べている。
(市場大変貌の予感 IPメガピクセルカメラの進化(2)へつづく)
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