「a&s JAPAN」最新号より
映像管理ソフトウエアはIP監視ソリューションの中核(1)
アナログからIPネットワークへ。いま、映像監視の世界は過渡期にある。その中核を担うのが映像管理ソフトウエアだ。その背景にはオープン化の潮流、H.264への対応、そして高度化システムとの連繋への要求がある。本稿では進展する映像管理ソフトウエアに焦点を合わせて最新事情を紹介する。
【A&S JAPAN 9月号(No.12)より】
大川鮎太郎
映像管理ソフトウエアの発展
日本に映像管理ソフトウエアの概念が入ってきたのはいつ頃からなのか。それまでのCCTVに代表されるアナログ監視カメラの時代は、単に映像を撮り、ビデオデッキのテープに録画するのが一般的だった。録画テープは120分程度のものが多く、そのままではすぐ録画容量がなくなってしまうため、タイムラプスビデオ(コマ落ち)により3倍程度の録画時間を確保していたという歴史がある。
「当時は業務用テレビの延長線上に監視カメラがあった」とKTワークショップ代表取締役の城戸誠一氏が語るように、「閉じた世界」であったことがうかがえる。監視の世界に映像管理ソフトウエアが誕生するようになるには、IPネットワークとの出会いが必要だった。

(左)ケーティーワークショップ 代表取締役 城戸誠一氏
(右)ジャバテル 代表取締役 佐々木宏至氏
「最初はWebブラウザにカメラで撮影した画面をはめ込んで見るようなところから出発した。もちろんこのままでは使えないので、さらに録画機能を付加していった」とジャバテル代表取締役の佐々木宏至氏も当時を回想する。そして、複数のIPカメラの映像をWebブラウザや専用のPCビューアで閲覧できるようにしたのが始まりだという。
さて、これはなにも30年前の話ではない。2000年以降、ここ6~7年前の出来事である。映像管理ソフトウエアという概念が、いかに新しく歴史の浅いものか理解できるだろう。
今、映像管理ソフトウエアは、カメラの設定や録画再生が簡単に行うことができるなどの基本機能に加えて、様々な処理機能や拡張性、連繋性などを付加することで、多様な監視ソリューションに対応していくことが可能である。まさにIPネットワーク監視時代の申し子である。
映像管理ソフトウエアの分類
映像管理ソフトウエアの種類は多種多様である。もちろん本稿では、監視用途に限定して紹介するわけだが、いくつかに分類できる。
まず、ローエンド、ミドルエンド、ハイエンドで分ける方法がある。ローエンドは、Windows使用でスタンドアロン型のDVRを使用して、録画再生など必要最小限のソフトウエアを搭載したものである。ミドルエンドは、DVRやNVR、ハイブリッドDVR等の録画機器を有し、数百台のカメラを集約できる機能を持ったものである。ハイエンドは、カメラ台数が数千台を超えるものということができる。佐々木氏は「ローエンド市場はいわばDIY方式でユーザーの自己責任に負うところが大きい。ソフトウエアの世界では、大は小を兼ねるのが大きな特長だ」と現状を語る。
また、一般的な分類として、国内市場では、カメラメーカーが提供するソフトウエアと、ソフトウエアベンダーが提供するマルチベンダー対応のソフトウエアという分け方がある。
さらに、アナログとIPが混在するハイブリッドシステムと完全IPシステムという分類もある。いずれにしても、IPネットワークにより世界中が繋がった今、映像管理ソフトウエアがIP監視システム全体の能力を左右する中核であることは間違いない。
ソフトウエアはオープン化へ
これまで、国内市場では、監視カメラメーカーがカメラや録画機器などのハードウエアをはじめ、ソフトウエアも独自開発し、ユーザーはカメラメーカーが提供するソフトウエアをパッケージとして利用するケースが多かった。前述したように、IP監視市場の歴史が浅く、現在でもアナログからIPへの移行が完了していない現状では、それは当然の選択であっただろう。しかし、IPネットワークの充実、各種システムとの統合や連繋を求める昨今の市場環境では、この流れが大きく変わりつつある。
IPカメラ録画ソフトKxView Proを自社開発しているネットカムシステムズ代表取締役の金延純男氏も「エンドユーザーのニーズはオープンアーキテクチャ志向が強くなった。コストや性能など、様々な仕様を吟味して最良のシステムを構築するためには、選択の自由度が大きなカギを握るからだ」と市場の感触を語る。

(左上)ネットカムシステムズ 代表取締役 金延純男氏
(右上)サンシステムサプライ 営業技術部 小幡聡氏
(下)エルモ社 システムエンジニアリング部 TMS推進グループ 企画・開発担当 光沢崇氏
また、ハイブリッドシステム分野で定評ある米国のクロスプラットフォームIPビデオソフトウエアexacqVisionを提供するサンシステムサプライ営業技術部の小幡聡氏も「オープンアーキテクチャの流れは、時代の要請だ。システムとしての拡張性を十分に発揮するためにも、この潮流はますます大きくなっていくと思う」と呼応する。
一方、オープン化を肯定しつつも「IP監視の世界は、まだあらゆる部分で十分な規格の共通化が図られておらず、オープン化の代償・負担が大きくなる。そういった部分の改善やIP市場全体の発展を期待しつつ、ONVIFなどの動向や成果に注目したい」とエルモ社システムエンジニアリング部TMS推進グループの光沢崇氏は規格統一の流れに期待する。エルモ社はトータルモニタリングシステムModel2を提供しており、多彩なライブ機能と直感的に操作できる検索画面に定評がある。
潮流はH.264対応
さて、ネットワークカメラの進展に伴い、監視の世界ではストレージが数百テラバイトを超えるケースも多く見られる。高画質化はストレージばかりでなく、ネットワーク帯域にも多大な負荷をかけることになる。ここで注目されるのが、高度な圧縮技術H.264への対応だ。既存のMPEG-4からの移行は既に業界内では常識となっており、次世代の事実上の標準になることが確実視されている。
ネットカムシステムズの金延氏も「CPUの性能がこれまで以上に必要になるなど諸問題があるが、H.264への積極的な対応を図っていく」との姿勢を見せる。また、KTワークショップの城戸氏も「H.264の規格はメーカーごとに個別の対応が必要となる。メーカー仕様に合わせた作り込みが急務となっている」と語る。さらにジャバテルの佐々木氏は「H.264への対応で、これまでのMPEGベースのレコーダーは使えなくなる。いよいよIPネットワークシステムへの急速な移行が進むかも知れない」と市場の変化を予見する。
(「映像管理ソフトウエアはIP監視ソリューションの中核(2)」へつづく)
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