「a&s JAPAN」最新号より
データセンターのセキュリティ事情(2)
ネットワークカメラが拡大

ネットワンシステムズ
営業推進グループソリューション本部
本部長 山口薫氏
新設のデータセンターでは、圧倒的にネットワークカメラを採用するケースが増えてきている。ただでさえ、膨大な電源設備を必要とするデータセンターでは、同軸ケーブルが必要なアナログカメラに対して、ネットワークカメラはLANケーブルだけの接続が可能なため、大幅に配線場所を削減することができる。また、カメラがPoE対応であれば、LANケーブルだけで電源も供給でき、工事費の削減にも繋がる。
ネットワンシステムズの営業推進グループソリューション本部本部長の山口薫氏も「複数のデータセンターを運営する事業者の中には、各拠点のラックをリモートから監視し、カメラも一括して管理できる監視カメラシステムを必要とされるところもある。この流れからもネットワークカメラは必須のアイテム」として、ネットワークカメラの拡販に注力しているという。
現在、アナログからIPへの移行は徐々に進行しており、カメラ増設時にはその拡張性からIPカメラを採用するデータセンターが多いようだ。

APCジャパン
ビジネス・デベロップメント部
マネージャー 鈴木良信氏
一方「大規模なデータセンターは、すべてのラック列はもとより、完全に死角をなくすため数百台のカメラを設置するケースが多い。このためカメラに多大な費用をかけられないというユーザー側の事情もある」と、APCジャパンのビジネス・デベロップメント部マネージャー鈴木良信氏が語るように、依然としてアナログユーザーが多いのも実情だ。ただし、IPカメラの低価格化、TCO削減効果、高画質などが広く認知されれば、IP化の流れは今後加速していくことが予想される。
また、今回取材した各社の情報では、データセンターのメガピクセルカメラに対する需要は、まだ主流に至っていないのが現状だ。ラック内にメガピクセルカメラを設置して、操作する人物の手もとを確認したいという要望もあるので、今後どのように進展するのか注目すべきだろう。
問われる画像圧縮・検索機能
録画装置に関しては、これまでのタイムラプスビデオやDVRなどの専用機ばかりでなく、ネットワークカメラの利用により、専用機はもちろん、ソフトウエアや汎用サーバーによるシステム構築も可能になった。やはり、ユーザー側には、過去数年の録画映像に対していつでも任意にアクセスできる環境を望む事例が多く、その際の短時間での操作や操作性の良さを求めている。

トリワークス
コーポレートビジネス部
パートナービジネスグループ マネージャ
大高友也氏
ネットワークカメラの管理・録画ソフトウエア「ArobaView」を提供しているトリワークスコーポレートビジネス部パートナービジネスグループマネージャの大高友也氏も、「専門のシステム管理者以外にも、オペレーターや警備担当者が録画映像を検索するケースは多い。その際、操作が簡単で検索しやすいものが業務の効率化に貢献することから要望が多い」と語る。
また、録画量を左右する動画の圧縮技術については、現在はMPEG-4が一般的だが、今後はH.264へと移行が急速に進みそうだ。ネットワンシステムズの河野氏は「ユーザーの要望は、データ量は少なく、フレーム数は多く、そして記録保存期間はできるだけ長くというのが実情」として、最大で1年半~2年の録画記録の保存を要求している金融機関の要求にも対応している。
監視の効率化を目指すIVS
さて、IVS(インテリジェント・ビデオ・システム)の動向はどうか。「画像分析技術と連繋した侵入検知、サーバーラック扉の開閉検知、不正カード使用時の映像との連繋などIVSが求められる場面が増えてきている」と清水建設の松崎氏は市場の感触を語る。
また、共連れ検知は、現時点ではカメラよりもセンサーで対応しているケースが多いようだ。ネットワンシステムズの河野氏は「カメラの動体検知機能を活用して、置き去り検知機能を付加しているシステムもある。この機能は、カメラ側にも録画サーバー側にも付加することができるが、カメラ側を選択すると設置台数が多いので、どうしてもコスト高になりユーザーに敬遠される傾向がある」と現状を語る。
いずれにしても、アクセス制御と映像との連繋、ラックのモニタリングなど、高度なセキュリティと監視業務の効率化という、二律背反が絶えず求められるデータセンターでは、IVSの進化は不可欠の技術と言える。
求められる統合ソフトウエア
これまで述べたように、一つのデータセンターの中でも、監視カメラは様々なシステムとの連繋が絶対的に必要となっている。また、近年では、複数のデータセンターの集中管理を求める大手事業者も増えてきている。
最近のソフトウエアのように、モニタリングや録画・再生などの各種のオペレーションがIPネットワーク経由で行え、操作性に優れたマルチベンダー、マルチカメラ対応の統合化が必要とされる時代になってきたようだ。「データセンターの拠点によっては、求めるネットワークカメラの仕様が大きく異なる場合もあるので、マルチカメラ対応は大きな利点になっている」とトリワークスの大高氏は自信を見せる。
また、APCジャパンが提供する物理セキュリティと環境監視アプライアンスシステムを連繋した「NetBots」は、アナログカメラとIPカメラが混在したハイブリッドシステムにも対応。サーバー室内の温度や湿度、煙や粒子などについて様々なセンサーと連動させてサーバー室の環境を最適に保つ。同時に、ラックに対するアクセスを制御し、開閉状況の監視も行う。同社の鈴木氏も「物理的、環境的、そして人的な脅威からIT資産を保護し、データセンターの便宜性を維持することが最も重要」と語る。

物理的、環境的、そして人的な脅威からIT資産を保護し、
データセンターの便宜性を維持することが最も重要
ITは所有から利用へ
現在、IT業界では、クラウドコンピューティングという概念に注目している。従来のコンピューター利用と比較すると、これまではユーザー(個人、企業)が独自にハードウエアやソフトウエア、データなどを自分自身で保有し管理していたのに対し、クラウドコンピューティングでは、ユーザーはインターネットを通してサービスを受けることができる。
ユーザーが用意すべきものは、最低限の接続環境(PCや携帯情報端末などの接続機器、その上で動くブラウザーやインターネット接続環境など)とサービス利用料金で、処理を実行するコンピューター本体の購入や蓄積データなどの管理の大半が不要となる。
清水建設の松崎氏も「クラウドコンピューティングの台頭によりデータセンターがどのように変貌していくか注目したい。これまでは、都心やその近郊がデータセンターの立地条件と考えられてきたが、これからは地方や海外に進出するかも知れない」とその可能性について述べるとともに、「構造や防災、空調や防犯の総合エンジニアリングの提供を通じて、データセンターのもう一段上のセキュリティ向上に貢献していきたい」と語った。
また近年、サーバーやストレージ、アプリケーションなどを仮想化する技術も注目を集めているが、APCジャパンの有本氏も「データセンター市場はまだまだ拡大する。サーバーの高密度化や仮想化もさらに進展することが予想される。電源や空調そしてセキュリティが有機的に連動する総合サービスを構築していきたい」との抱負を語った。
最後に、ネットワンシステムズの山口氏が「情報セキュリティの実装対策基準であるPCI DSS(ペイメント・カード・インダストリー・データ・セキュリティ・スタンダード)をデータセンターへ適用する提案が求められることもある」と語っているように、標準化したセキュリティ基準が一段と必要になる時代を迎えていると言える。さらに同氏は「今後進展が予想されるクラウドコンピューティングの動きにも積極的に対応する準備はできている。ネットワークと共にクラウドコンピューティングの基盤となるサーバー、ストレージ、仮想化ソフトウエアそしてファシリティ、物理セキュリティなど様々なサービスの提供を通じてデータセンターの発展に貢献したい」と締めくくった。
ITは所有する時代から利用する時代へと移行している。データセンターには、さらに高度で総合的なセキュリティ環境が求められる時代になったと言える。 (終)
- 次の記事
- データセンターのセキュリティ事情(1)
- 前の記事
- 入退管理システムと他システムの連繋(1)











