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「a&s JAPAN」最新号より

高度なシステム連携で拡大する生体認証市場(3)

2009年05月21日 このエントリーをはてなブックマークに追加

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入退管理とICカード

 やはり基本となるのは、ICカードとの連携だ。指紋や静脈、虹彩や顔認証とあらゆる生体認証方式をカバーするセキュリティシステムのベンダーである中央電子では、入退管理システムAcsaranシリーズを提供している。同社理事でセキュリティシステム営業部長の中村肇氏は「システムには各種の非接触ICカードはもちろん、磁気カードや非接触タグといった豊富な照合媒体に対応できる柔軟性が必要だ。複数の生体認証機器を一つのシステムに組み込むことも求められている。生体認証による高度なセキュリティを保ちながら、カード等との連携で利便性を高めることが重要だ」と語り、現在の市場は、各種の生体認証方式やICカードをユーザーがその必要性や状況に合わせて使い分ける時代がやってきたことを強調する。

中央電子 セキュリティシステム営業部長 中村肇氏 日立情報制御ソリューションズ 営業セキュリティ営業部 部長 渡辺敦氏
(左)中央電子 セキュリティシステム営業部長 中村肇氏
(右)日立情報制御ソリューションズ 営業セキュリティ営業部 部長 渡辺敦氏

 また、日立情報制御ソリューションズ 営業本部セキュリティ営業部部長の渡辺敦氏も「現在の入退管理の市場では、その70%がICカード等のカードのみで運用されており、生体認証の利用は30%に満たない。しかし、セキュリティレベルの向上はあらゆる企業が必要としており、精度と操作性に裏付けされ、しかもコストパフォーマンスに優れた生体認証システムへの潜在的なニーズは大きい」と期待する。

 複数の生体認証を同一システム内で利用する「マルチモーダイル」、複数のICカードに対応する「マルチカード」、異種システムに対応する「マルチベンダー」は、ICカードと生体認証が連携する上で、一つの潮流となることも予想される。

入退管理とRFID

 その優れた特性から大きな期待を寄せられているRFID。生体認証との連携はどのような進展を見せているのか。NECが提供する島根県あさひ社会復帰促進センターの統合入退管理システムが注目される。敷地内に設置されたRFIDアンテナと監視カメラにより、入所者や職員の位置情報を中央で一元管理。カメラシステムと指紋認証システムを組み合わせることで、重要な場所の入退管理を高精度かつ迅速に行う。また、入所者の許可領域内での行動の自由度を増すと同時に、なりすましや共連れによる侵入を防いでいる。さらに、社会復帰促進センターとしては国内で初めて、入所者の購入物品の要求をキオスク端末で受け付けるシステムを導入しており、利用時の本人確認には、RFIDと指紋認証を組み合わせたシステムを採用。時間にとらわれず、従来よりも自由にかつ柔軟に要求手続きが行えるようになったという。RFIDの特性を活かした生体認証との連携は、今後さらに広がりをみせるだろう。

監視カメラとの連携

 前述した芝電子システムズの2メガピクセル高画質監視カメラと連携した歩行通過での顔認証のほかに特定人物検知システムが注目される。これは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの万引き常習犯対策やレストランやホテルまた高級ブティックなどのVIP対応などでの応用が期待されている。

 また、中央電子の入退管理システムでは、監視カメラの画像分析機能とドアに設置したセンサーを連携。認証装置にアクセスした当人にリアルタイムでマーキングを施し、その人以外が入室しようとするとアラームを発報。共連れ防止に効果を発揮するという。

 これまで生体認証は、なりすましの防止には役立つものの、共連れ防止には有効な手段がなかった。監視カメラの画像分析機能やセンサーと連携することは、利便性を確保しながら共連れ防止を実現する良いモデルとなりそうだ。

勤怠管理システムとの連携

 勤怠管理システムとの連携はかなり進んでいる。生体認証のなりすまし防止効果が発揮され、経費削減という目に見える結果が出るからだ。SYNCHROの森田氏によれば「韓国のある役所で、手の甲静脈認証システムを採用したところ、1年でこれまで支払っていた残業代が3割削減された」という。いかになりすましや不正な勤怠報告がまかり通っていたかが分かる。国内でも、パートやアルバイトを大量に雇用する形態の業種で指紋や指静脈などを導入して、大きな成果を上げている。

SSFCカードとの連携

 また、大日本印刷が中心になって進めているSSFC(Shared Security FormatsCooperation)も注目される。これは1枚のICカードで入退管理からPCログイン、その他オフィス機器やシステムなどを利用できるもの。完全なマルチベンダー対応で、生体認証との連携も視野に入れている。2009年2月現在、SSFCアライアンスには約180社が加盟しており、すでに金融機関や企業、大学など200社に約100万枚のSSFCフォーマットの非接触ICカードが納入されている。昨年パリで開催した世界最大級のカード関連展示会「CARTES 2008」にも出展して好評を博したという。大日本印刷IPS事業部セキュリティソリューション開発部の部長でSSFCアライアンス事務局局長の矢野義博氏も「生体認証に対するニーズは非常に高い。仕様としてはカード内に2つの生体認証データを載せたいと考えている。いずれにしても、2010年の春から夏にかけて、SSFCカードと連携した生体認証システムが、SSFC参加メーカーから供給が開始されるだろう」との見通しを語った。

大日本印刷 IPS事業部 セキュリティソリューション開発部 部長/SSFCアライアンス事務局 局長 矢野義博氏 大日本印刷 IPS事業部 デジタルセキュリティ本部 プロダクトマネジメント部 近田恭之氏
(左)大日本印刷 IPS事業部 セキュリティソリューション開発部 部長/SSFCアライアンス事務局 局長 矢野義博氏
(右)大日本印刷 IPS事業部 デジタルセキュリティ本部 プロダクトマネジメント部 近田恭之氏

話題の人体通信

 生体認証とは異なるが、人間の身体表面の静電気層に信号を与えて通信する「人体通信」が脚光を浴びている。例えばポケットにICカード(SSFC含む)と人体通信モジュールを入れておけば、利用システムに触れるか、手をかざすだけで認証が可能になる。つまり、電気錠によって施錠されたドアノブに人が手を触れるだけで解錠して、歩行者がゲートにさしかかると床を通じて信号を送りゲートが開く。大日本印刷IPS事業部 デジタルセキュリティ本部プロダクトマネジメント部の近田恭之氏によれば「既存システムとの親和性が高く、どんなシステムにも応用が可能だ」という。初対面の人と握手をするだけで、お互いの名刺データを自動的に交換するということも可能だそうだ。今後、人体通信がどんな展開をみせるのか大いに注目していきたい。

多様化する生体認証の未来

 これまで生体認証方式は、認証精度、セキュリティレベル、利便性、コストなどが大きな軸として語られてきた。しかし今後は、接触と非接触、体外データと体内データ、1:1と1:N、事業者と一般消費者が新機軸として加わり、システムとしての新たな機能競争が進む。多様化する市場の中で、これまで以上に厳しい市場占有の争奪戦を展開しそうだ。

 セキュリティゲート・ジャパンの長瀬氏は「国家レベルから、一般消費者市場への拡販に注力したい」という展望を述べる。特に虹彩分野では来年、ローエンド市場向けに入門機としての虹彩認証端末が登場する予定で、低コスト化による虹彩認証市場の拡大を目指す。

 また、認証精度の追求は各社共通のテーマだが、日立情報制御ソリューションズの成田氏は「クレジットの決済などが指静脈のみで行えるような精度と信頼性を確立したい」との決意を語り、芝電子の高橋氏も「ウォークスルー顔認証のさらなる精度向上を図り、共連れ抑止ではなくシステム連携での共連れ完全防止に挑戦したい」と意欲的だ。

 一方、中央電子の中村氏は「システム内に複数のベンダーの機器が存在しても、一つの生体テンプレートで対応できるという新しい動きが始まっている」として、マルチカード、マルチベンダーシステム時代を見据える。

 生体認証は今後どんな発展をとげるのだろうか。「生体認証機能付き携帯電話にSSFCが搭載され連携されると、マンションの鍵やサーバールームなどへの入退室において、生体認証装置を導入することなく、セキュリティの向上をはかれる」と大日本印刷の矢野氏が語ったように、生体認証は私たちの暮らしの中に、さらに高度なセキュリティと利便性をもたらしてくれるに違いない。

 最後にSYNCHROの森田氏が「目標は遠いが、ストレスのない認証速度で1:N認証を目指す」と語った技術に対する想いは、生体認証に携わるすべての人に共通するところだろう。

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