「a&s JAPAN」最新号より
高度なシステム連携で拡大する生体認証市場(2)
指紋/対応率の向上
生体認証の世界市場での占有が約60%以上と最多で、歴史的に最も古くから採用されてきた信頼性の高い認証方式。現在、暮らしと社会の様々な場面で指紋認証を活用していることは広く知られている。そのトップメーカーであるNEC 第二官公ソリューション事業部主任の諏訪多れい氏は「NECの指紋照合技術はその精度において既に世界最高水準を達成している。さらに、指紋登録時の対応率を上げることに注力している」と語る。NECでは指紋の読み取りに際して、指内散乱光直接読取方式のセンサーを独自に開発し、指の中を透過する光を利用し、乾燥指や多汗指など、読み取りが困難だった人に対しても対応率を上げることに成功している。「これまでは、指紋が読み取りにくい人が2~3%の割合でいたが、この方式の採用により1桁改善された」と諏訪多氏は自信をみせる。さらに、指紋と血管を1回の操作で同時に読み取る新しいスキャナも開発。これは、俗にハイブリッド方式とも呼ぶもので、対応率の向上や偽造防止に貢献する。
NEC第二官公ソリューション事業部 主任 諏訪多れい氏
指静脈/信頼性で市場拡大
銀行ATMで成功を収めた指静脈方式だが、既に次の段階を目指して製品開発が進んでいる。日立情報制御ソリューションズでは、この3月にSecuaVeinAttestorの新製品を市場投入した。これは、指静脈スキャナ、テンキー、ICカードリーダーを一体化したオールインワン端末により多様な認証方式をサポート。特に入退管理分野を視野に入れて国内外の主要ICカードに対応し、指静脈データをICカードに格納することも可能にした。Wiegand通信インターフェース搭載によるマルチベンダーシステム対応を実現した。成田氏も「機器のユーザビリティーもさらに向上し、大幅なコストダウンを達成した。指静脈認証方式の精度(偽造しにくい)、信頼性を活かしてワールドワイドの展開を図る一方、既存システムのリプレース需要にも大いに期待している」と意欲をみせる。
前述したように、生体認証機器の基本原則(普遍性や唯一性)はシステムとしての大前提だが、「コスト」面での進化は市場を拡大する上で最も重要な要素だ。このコストパフォーマンスが市場でどのように評価されるかが注目される。
手の甲静脈/ユーザビリティー
世界で初めて静脈を生体認証機器に実用化したのは韓国Techsphere社である。その販売元で日本総代理店のSYNCHROが提供するのが手の甲静脈認証方式VP-ⅡSPだ。原理的には指静脈や手のひら静脈と同様に、手の甲の静脈パターンを利用する。同社セキュリティ事業部営業第2グループマネージャーの森田泉氏は「静脈認証の先駆者として製品には自信を持っている。特に使用時のユーザビリティーには定評があり、対応率も非常に高い」と自信をうかがわせる。端末機器としてはやや大型の感があるが、ガイドのバーを握って操作する方式は、その動きで正しく認証部分に手の甲を導くため、森田氏が語るユーザビリティーの良さを感じた。また、0.4秒という認証速度も反応も良く快適だ。入退管理分野を最大市場として捉え、今後さらにシェア獲得に注力していく方針という。
SYNCHRO セキュリティ事業部
営業第2グループマネージャー 森田泉氏
顔/Webと歩行通過
香港空港の出入国管理システムへの導入など、セキュリティ分野での採用が進められてきた顔認証システムだが、外資系レジャー施設の年間パスポートに採用されたことで、さらに、新しい方向性も見えてきた。NEC 第二官公ソリューション事業部主任の宮岡一頼氏は「いま注目されているデジタルサイネージ広告の分野で、視聴している人をWebカメラが認識し、顔の特長によって性別や年齢層を推定。視聴層にあった広告を配信する試みなどが行われている」と語り、新たな可能性に期待する。

(左)NEC 第二官公ソリューション事業部 主任 宮岡一頼氏
(右)芝電子システムズ マネージャー 高橋統氏
一方、富士フイルムの高性能顔検出顔照合エンジンを搭載した顔認証システムFaceMeisterシリーズを提供する芝電子システムズでは、2メガピクセルカメラにより、入退管理の分野でゲートレスでハンズフリーのウォークスルー(歩行通過)認証を実現している。ICカードなどを必要としない1:N認証のため、Nの数は推奨(注)1000人により中・小規模オフィスや工場などでは、これまでにない便利なソリューションを提供してくれる。照合スピードも0.5秒と高速で、同社マネージャーの高橋統氏によれば「歩行通過により最大5人を同時に認証できる能力があり、走行通過でも可能」と自信を語る。ICカードは広く普及しているが、その使用が制限される業態や状況においては、顔認証を利用したハンズフリーの歩行通過は大きな恩恵と言える。
注:1人に対して最大10パターンの登録が可能であり、その場合100人制限となる。
虹彩/コスト改革で躍進
数ある生体認証方式の中で最高の認証精度を誇るのが虹彩認証だ。他人受入率は120万分の1と桁違いで、他の認証システムに見られるような本人拒否率(FRR)と他人受入率(FAR)を調整する「閾値」の設定がないほどだ。セキュリティゲート・ジャパン 代表取締役の長瀬泰郎氏も「ICカードなどを必要としない真の意味での1:N認証を実現しているのは虹彩認証だけ」とその精度に自信をみせる。Nの数は10万のオーダーでも、0.3秒と高速だ。

(左)セキュリティゲート・ジャパン 代表取締役 長瀬泰郎氏
(右)セキュリティゲート・ジャパン システム営業部 部長 津村正志氏
さて、この虹彩認証の分野にいま大きな衝撃が生まれている。すでに市場投入されたIrisAccess SoHoの存在だ。虹彩認証機器のブランド名に「ソーホー」が付くようになったのか、というのが正直な実感だ。同社システム営業部部長の津村正志氏も「価格はスタンドアロンで90万円を切った。この数字は従来機の約1/3で、ハイエンド市場の生体認証機器と遜色ない価格となる」と期待を寄せる。製造元の米国LG社が一般消費者向けに製品計画を移行していることもあり、「費用対効果」という大きな武器を有することができれば、国内での市場拡大が期待できる。
ここまで見てきたように、市民権を得た生体認証は大きな飛躍の時を迎えている。対応率、認証精度、認証速度、操作性、信頼性などに加えて、費用面の進展が市場拡大の推進力となるのは間違いない。システム連携の最新の動向を追った。











