「a&s JAPAN」最新号より
高度なシステム連携で拡大する生体認証市場(1)
生体認証が私たちの生活に静かに浸透している。そのセキュリティと利便性で、どんな未来が訪れるのか。生体認証の最新動向と市場でのシステム連携の現状を取材した。【A&S JAPAN 5月号(No.10)より】
大川鮎太郎
市民権を得た生体認証
ここ1、2年で生体認証はある一定の市民権を得たようだ。これまでの漠然とした印象の先行や的外れな誤解が解消し、かなり理解が進んだことは間違いない。
この市民権の獲得に大きく貢献したのが、銀行ATMが採用した指静脈と手のひら静脈を利用した生体認証方式だ。一般の主婦をはじめ、多くの人が日常生活で「生体認証」というものの技術や機器を身近に体験したことが大きな転機となった。
「銀行ATMに指静脈認証システムが採用されてからかなりの時間が経過したが、誤認証や操作等のクレーム情報はほとんどない」と日立情報制御ソリューションズ セキュリティシステム本部 セキュリティビジネス部部長 兼 営業本部海外営業担当部長の成田正久氏が語るように、機器やシステムとしての完成度はかなり高かったことがうかがえる。

日立情報制御ソリューションズ セキュリティシステム本部
セキュリティビジネス部部長 兼営業本部海外営業担当部長成田正久氏
もちろん、以前から指紋認証や静脈認証についてはオフィスの入退管理やパソコン・携帯電話のログイン等で、虹彩認証についてはハイエンドのセキュリティ分野で採用してきた。しかし、静脈認証が大切なお金を扱う銀行が採用したことによる信頼感とユーザーが体感した操作性、さらに報道機関によるアナウンス効果が、生体認証の市民権獲得に絶大な力を発揮したと言える。
一般人使用の意義
生体認証の銀行ATMでの成功に秘められたもう一つの意義は、末端のエンドユーザーつまり一般人向けの市場であった点だ。
生体認証には、普遍性(すべての人が有する特長であること)、唯一性(同じ特長を持つ他人がいないこと)、永続性(時間の経過によってその特長が変わらないこと)が基本原則として存在する。この原則に加え、収集性(生体データが誰からも速やかにかつ正確に収集できること)、受容性(心理的な拒否反応が少ないこと)、操作性(登録や認証時に複雑な説明がなくても正しく操作ができること)、さらに迅速性や設置容易性、そして安全性などがあり、システムとして克服すべき課題は多岐にわたる。老若男女を問わない多くの世代が「日常生活」の中で利用する銀行ATMで、この課題をすべて克服したことは大きい。
あるベンダーの方が「ATMで生体認証を採用した時は正直驚いた。一般人での運用は何が起こるか予想もできないからだ」と述懐したように、大きな挑戦だったことは想像に難くない。この市民権をどのように活かそうとしているのか、様々な生体認証方式の最新動向を探った。
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