ニュース
マルエツ、特定商品で「販売日本一」に、大量仕入れ、取引有利に(売る技術光る戦略)
マルエツは毎週、全店で特定の商品を売り込み販売数量で日本一を目指している。メーカーや卸から有利な取引条件を引き出すのが狙いだ。食品の売上高では国内小売り10位の同社だが、工夫次第でイトーヨーカ堂など大手を上回るバイイングパワーを得られる。激しい価格競争を生き抜く知恵の一つといえる。
マルエツの店舗を訪れると、「店長の太鼓特判」という看板を掲げた売り場に気がつくはずだ。毎週、加工食品や総菜、日配品などの各部から1品目ずつ選定して全店で特売している。
8月19〜25日は加工食品なら日清食品「つけ麺(めん)の達人」(260グラム・298円)、日配食品からはミツカン「味ぽん」(360ミリリットル・198円)などが並ぶ。
「これだけ推薦しているのだから、どれか試してみようかしら」。マルエツ中野若宮店(東京・中野)に来店していた主婦は興味深そうに商品を眺めていた。
マルエツは「MJ―1」と呼ぶこの取り組みを今春に始めた。「MJ―1はマルエツ・ジャパン・ナンバーワンの略。Mにはマルエツとメーカーさん、従業員みんなでという3つの意味を込めた」と、高橋恵三社長は説明する。
実際、販売数量で日本一を達成した商品も数多く出ている。明治乳業「十勝スマートチーズ」は期間内で約9万3千個を販売し、メーカーからの仕入れ数量で日本一になった。フジッコの「生姜こんぶ」も全店合計で9万7千個を販売し、やはり日本一だった。
これだけの数量を達成するには商品の演出も重要だ。各部が選定した商品リストをもとに、週ごとの販売計画を作成する。それを担うのは今春に新設したばかりの「52週MD推進部」。1年をにらんで季節や祭事に合わせたアイデアを練る。
例えば8月19〜25日は季節や祭事に合わせ、いち早く「秋の味覚」をテーマに売り場を作った。紅葉をあしらった飾りをつけるほか、小型の電子看板(デジタルサイネージ)で商品のテレビCMを流す。料理提案の冊子なども一緒に陳列する。
ここまでして日本一にこだわるのは、メーカーや卸から有利な取引条件を引き出せるためだ。
メーカーは売り上げを伸ばすため、料理提案の店内広告を提供するなど、「様々な販促手段の提案をしてくれる」(同社)。また1品当たりの仕入れ高も低くなるため、店頭価格は通常より1〜2割程度は下げられるという。
実績が上がれば、メーカーはまた次の新商品や販促策の提案を優先的に持ちかける好循環が生まれる。「取引先とマルエツとが協業して需要を作り上げるビジネスモデル」(同社)だ。
マルエツの既存店売上高は2010年3〜6月まで前年比3〜6%減で推移していたが、7月は0・3%減まで回復した。今回の取り組みをテコに、さらなる業績回復につなげたい考えだ。
日経MJの小売業調査によれば、マルエツは食品のバイイングパワーランキングで10位だった。売り上げ規模はイオンリテールの3分の1、イトーヨーカ堂の2分の1にとどまる。
スーパーでは激しい価格競争が続いており、加工食品などの仕入れ価格は売上高の規模の大きさに左右される。マルエツの取り組みは、規模で劣る中堅スーパーが生き残るための有力な手段といえそうだ。
(飛田臨太郎)
【表】食品のバイイングパワーランキング
順位 社 名
1 セブン−イレブン・ジャパン
2 ローソン
3 イオンリテール
4 ファミリーマート
5 イトーヨーカ堂
6 ユニー
7 サークルKサンクス
8 ダイエー
9 ライフコーポレーション
10 マルエツ
(注)2009年度の小売業調査より作成











