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激動ジーンズ攻防し烈、ユニクロ、拡大へ執念、「UJ」2価格に(繊衣次の一手)

2010年05月21日 / 日経MJ(流通新聞) このエントリーをはてなブックマークに追加

品質磨き、すみ分け

 昨年1000円を切る激安品の登場で、激震に見舞われたジーンズ市場。戦端を開いたファーストリテイリングは主力のユニクロで今年に入って新ブランド戦略を始動し、市場制圧に並々ならぬ執念をみせる。ナショナルブランド(NB)メーカーも巻き返しに必死で、その余波はジーンズ専門店に事業構造改革を迫る。製販全体が揺れ動くジーンズ市場の最前線を追う。(関連記事6面に)

 「2990円はやめようと思う」。柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は2月に華々しく発売したばかりのユニクロのジーンズ新ブランド「UJ」で、早くも大きな見直しに動き出した。

 UJの目玉の一つが、ユニクロのジーンズで以前から主力だった3990円の下に、2990円と1990円の商品をそろえ、すき間なくニーズを取り込むことだった。だが、ふたを開けると、価格帯ごとの差が消費者に必ずしも伝わらず、特に低価格品は予想より売れなかった。

 柳井氏は「2990円をなくし、商品開発は3990円へ集中していくことで、1990円の商品との違いをハッキリさせる」と語る。時期は明示しないが、年内にも2プライスに仕切り直したUJが店頭に並ぶとみられる。

 この新戦略が、ジーンズ市場の新たな火種となるのは確実だ。

 UJの3990円はもともと「有名ブランドの1万〜1万2000円ジーンズと同等」とうたうほど高品質を誇る。ジーンズの魅力の一つでもある洗ったときの色落ち具合も考慮し、素材メーカーと糸の形状にまで踏み込んで開発するなど細部に凝った作りだ。

 素材を供給する国際的なデニムメーカーのカイハラ(広島県福山市)の貝原良治会長も「毎週、綿密な打ち合わせをしている。こだわりはエドウインなど大手NBメーカーに勝るとも劣らない」と評する。2990円をやめ、3990円商品に磨きを掛けてくれば、NBジーンズにとって、さらなる脅威となる。

 一方、1990円商品を通じ、低価格帯でも攻勢を緩めない。昨春、低価格衣料店「ジーユー」の990円ジーンズを仕掛けた柳井氏だが「1990円で本当に満足できるジーンズを求めるニーズもある」と語る。

 ジーユーやそれに追随したスーパーなどの激安品は無駄を徹底してそぎ落とした仕様で"作業着"としての需要も少なくなかった。そうした実用一辺倒に飽きたらず、ファッションとしてリーズナブルなジーンズを求める潜在顧客は別にいるとの見立てだ。

 ユニクロのジーンズ販売量は2005年8月期に年1000万本の大台に達した後、大きくは伸びていないもよう。UJの価格政策の変更に、需要の取りこぼしを徹底排除し、さらなる高みを目指す執念を込める。

 ただ、UJには価格以外にも課題がある。最近のユニクロジーンズ売り場では中高年層を中心に客が店員を探し回っていたり、見つけた店員と長く話し込んだりする姿が目立つ。UJの今春の商品は54種類と昨年春の約3倍。豊富さにかえって戸惑う人も多い。

 価格の整理に加え、せっかくの商品のこだわりを的確に伝えるため、接客や広告でも新たな手法が必要だろう。逆に見れば、価格見直しと同時にこうした面の改革にも成功するなら「UJで世界のジーンズ業界構造を変える」という柳井氏の野望は実現に近づく。

NB、巻き返し狙う

エドウイン 直営店に新商品

リーバイス 青山商事とFC

 若者でにぎわう東京・原宿の通称「キャットストリート」。国内ジーンズメーカーの雄、エドウイン(東京・荒川)が直営する「CLUB EDWIN(クラブ・エドウイン)」で、売り出すたびにすぐ品切れとなる商品がある。ジーンズを作る自社工場で仕上げたトートバッグだ。

 ジーンズで培った技術を生かし、約3000〜5000円と手ごろな価格ながら、細部まで作り込んだバッグに20〜30代男性が飛びついた。

 「従来難しかった提案が色々とできる」。小川信幸常務は今春から本格展開に乗り出した直営店の手応えを語る。以前はアウトレット店を除きほとんどなかった「エドウイン」の直営店をこの春に原宿、大阪、福岡と一気に3店開き計6店とした。バッグ以外にも、ジーンズと同素材の帽子など新商品を矢継ぎ早に投入中だ。

 卸売りだけでは、実績がない新機軸の商品が店頭に浸透するまでに時間がかかるが、直営店なら「論より証拠」でまず試せる。直営店で得た反応を主力の卸売りにフィードバックし、小売りと卸売りの両事業の相乗効果を狙う。

 リーバイ・ストラウスジャパンも小売事業の強化を軸にブランド全体の浮揚を目指す。土居健人社長は「今後は小売りと卸売りの両方の強化が必要」と語る。

 「リーバイスストア」と呼ぶ専門店は直営・フランチャイズチェーン(FC)合わせて全国に29店。主力の男性用ジーンズで新商品を先行発売するほか、女性用衣料やアクセサリーなど育成中の商品も扱い、消費者へのブランド訴求と市場分析の2つの役割を担う。

 紳士服最大手の青山商事とも提携。青山子会社をFC加盟者として迎え、3〜4月にまず2店を開いた。資金や店舗開発ノウハウが豊富な青山の協力を取り付け、多店舗化に向けてはエドウイン以上に強固な態勢を整えた格好だ。

 ユニクロのUJは商品企画、広告、店頭展開の三位一体で、消費者への浸透を急ぐ。NBジーンズにとっても、取引先の短期的な判断に左右されず、腰を据えてブランドをPRする「出口戦略」は対抗上、待ったなしの課題だ。不慣れな小売事業拡大はコストがかさみリスクもはらむが、他に選択肢はない。

 エドウインのもの作りを担うグループ会社エドウイン商事の小林道和専務は「やるリスクより、やらないリスクの方が大きい」と断言。リーバイスの土居氏も「ビジネスの発想を、メーカー的な卸ベースのものから小売りベースに変えない限り、成長はない」と巻き返しへ決意を語る。

 ユニクロもリスクをとることで成長してきた。今なお強いブランド力を保つNBジーンズメーカーがビジネスモデルを自ら変革し、進化を遂げられるか。巻き返しは始まったばかりだ。

激安に一服感 質と両立探る

 日本ジーンズ協議会によると国内メーカーのジーンズ生産本数(ユニクロなどは含まない)は2008年まで4年連続で減少。6000万本の大台を割り、09年も落ち込みは続く見通しだ。ただ、安さばかりが注目された09年に比べ、今年のジーンズ市場は価格と品質のバランスがより厳しく問われている。

 今年、スーパーなど小売り大手の激安ジーンズへの新規参入はピタリと止まった。リーマン・ショックで欧米の需要が冷え込み、アジアなどで宙に浮いた素材在庫があふれていた昨年に比べ、現在は生産環境も難しさを増す。ジーユーなど一部は効率的な製造・流通の仕組みを確立し低価格販売を続けているが、市場全体で低価格化が進む展開は遠のいた。

 ただ、激安品の席巻で消費者のジーンズ相場観は揺さぶられ、その余波は広がる。ある大手衣料素材メーカー幹部は「数年前の海外高級ジーンズブームの時、国内メーカーも安易に価格をつり上げた。一転、激安品の登場に『以前は高値づかみをした』と考える消費者が増え、価格を見る目は一段とシビアになった」と話す。

 製造小売り(SPA)化を急ぐ専門店と、アパレルメーカーの川下攻勢がせめぎ合う日本の衣料市場。そうしたなかで、ジーンズ流通はメーカーと販売店の共生関係が保たれていたが、ここ1〜2年で環境は激変した。

 勝ち残るのはユニクロかNBか。素材までさかのぼった国際的な需給動向を踏まえ、有効な価格政策やブランド戦略を打ち出せるかで、優勝劣敗が鮮明になる。競争の行方はジーンズだけにとどまらず、多くの衣料関連企業の今後の戦略に影を落としそうだ。(堀大介)

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