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電子看板、じわり普及、レジスペースに設置、サース型で導入費削減。

2010年02月01日 / 日経産業新聞 このエントリーをはてなブックマークに追加

レジスペースに設置 広告商品の売上高2倍も

サース型で導入費削減 中小企業も利用しやすく

 商業施設や交通機関などに設置したディスプレーに広告などを流す「デジタルサイネージ(電子看板、DS)」が本格的な普及期に入ろうとしている。高い訴求力が期待できる一方、具体的な広告効果の検証は試行錯誤の段階。導入にあたっては視聴者がDSに気を取られて思わぬ事故につながらないようにする安全対策や景観配慮も必要になるので注意したい。

 2009年12月末。ジャスコ品川シーサイド店(東京・品川)ではレジ後方にずらっと並んだ液晶ディスプレーが買い物客の視線を集めていた。流す情報はイオングループのカード事業や大手メーカーのカップめんの広告など5分間で20種類にのぼる。

 イオンは08年5月にジャスコ津田沼店(千葉県習志野市)で実験的に導入。レジスペースや通路などに26インチの液晶ディスプレーを計59台置いた。その結果、「DSで広告を流した商品は一部を除いて売り上げが平均で2倍に増えた」という。

 好結果を受けて徐々に導入店舗を拡大。ディスプレーの設置場所は「客が立ち止まるレジスペースが最適」と判断。現在は1店舗当たり平均10台の32インチの液晶ディスプレーを主に食品売り場のレジスペースに設置する。

 昨年12月には導入店舗を関東地方の30店舗から全国規模の112店舗まで一気に拡大した。イオンのIT(情報技術)サービス子会社、イオンアイビス(千葉市)の北沢清システム開発本部長によると導入の狙いは3つ。1つは「商品の売上拡大」、2つ目は「(イオン自体の全体の)広告費の削減」、3つ目は「広告を出すメーカーなどから得られる収入」。

 イオンが導入したDSは日立製作所が手がけるサース(SaaS)型サービス。ネットワーク経由でソフトの機能を提供するため、個別にシステムを構築する場合に比べ導入費用などを削減できるのが特徴だ。

 運用が容易な点も導入企業にとってはありがたい。広告のデータと放映する順番を示したメニューを送れば、日立側が編成や登録、配信、運用管理まで一貫して受け持つ。店舗や時間帯ごとにコンテンツを変えることも簡単にできる。

 DSは08年前後から国内でも普及し始めた。最近は自らサーバーなどを持つ必要が無く、ディスプレー1台あたり月額数万円程度で利用できるサース型が徐々に普及。大企業だけではなく、中堅・中小企業も利用しやすい環境が整いつつある。

 青森県が運営する特産品や工芸品のアンテナショップ「あおもり北彩館東京店」(東京・千代田)では09年12月からDSを導入。店内と店外に1台ずつ64インチの大型液晶ディスプレーを設置した。青森県内の農産品・水産品や観光地などを紹介するコンテンツは県が自ら作成する一方、コンテンツの管理や配信は富士通のサース型サービスを活用している。

 富士通の鈴木茂之デジタルサイネージビジネス部長は「来店するということはその店の取り扱う商品に興味があるということ。DSを使えば購買など次の行動につなげやすい」と効果を強調。青森県農林水産部の堀義明グループマネジャーは「来店客に焦点を絞って店で取り扱う商品や材料の情報を提供して購買に結びつけたい」と話す。

 来店客がどれだけDSを視聴したかまで把握したい場合は、KDDIとNECのサービスが注目されそうだ。

 両社は09年11月から1月中旬まで東京都内の携帯電話販売店2店舗でDSの実証実験を実施。店内と店外向けに1台ずつディスプレーを設置し、携帯電話端末やサービスなどの広告を配信したが、その際にNECの「視認効果測定機能」を組み合わせた。

 ディスプレーに設置したカメラで視聴者の顔を画像データに取り込み、性別や年齢層を自動的に識別。視聴者のデータを集計する。NECは「性別で90%以上、年齢も10歳単位で70%程度の確率で正しく認識できる」としている。

 両社は今回、データの収集にとどめたが、活用次第では効果の高い広告作りにつなげられそうだ。今後、本格的な活用についても検討しており、こうした付加価値の高いDSサービスを含め、選択肢は増えそうだ。

安全対策・景観配慮も必要

 デジタルサイネージ(DS)業界に詳しいシード・プランニング(東京・台東)の加藤鈴佳・主任研究員はDSの課題として「安全対策」を第1に挙げる。

 DSは屋外スペースに設置することが多く、視聴者が気を取られすぎると交通事故などにもつながりかねない。実際、昨年10月から東京駅など6駅でホームと対面する壁にDSを設置した東京地下鉄(東京・台東)は「安全のため、DSを設置したのはホームドア(可動柵)がある駅だけ」という。

 加藤氏は「景観に配慮することも必要」と指摘する。景観保護条例を制定する自治体も増えており、DSが本格普及期に入ると景観問題が浮上してくる可能性もある。

 「視聴率」のような広告効果を示す共通の指標がない課題もある。DSを設置する店やDSに広告を出す企業にとってどの程度の費用対効果があるのか、現時点では明確に判断しづらい面がある。

 加藤氏は「現時点ではテレビCMをそのままDSで流しているケースが多く、場所や時間帯などに合わせた広告制作ができているとは言い難い」と話す。コンテンツ(情報の内容)づくりの知恵も問われそうだ。(漆間泰志)

【表】主なIT企業のデジタルサイネージ   

   主な特徴

▼日立製作所・メディアサービス部〓(03・4564・9701)   

   個別のシステム構築(SI)のほか、導入費用を削減できるサース型サービスを提供。サース型で1店舗当たり月額1万5000円程度(初期費用やハード代など除く)

▼富士通・映像ビジネス推進部〓(03・6424・6583)   

   SIのほか、サース型サービスを提供。ワンセグを活用し、特定スポットの周辺で情報配信するサービスも。サース型でディスプレー1台当たりの最低価格で数千円から(税別、初期費用など除く)

▼NEC・デジタルサイネージビジネス推進グループ(03・3798・9479)   

   「視認効果測定機能」をオプションで提供。サース型の基本料金でディスプレー10台の場合、月額10万円から(税別、初期費用など除く)

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