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仏像の展示施設新調、奈良の寺院・博物館で相次ぐ、想像かき立てる照明。
個性際立つ効果
平城遷都1300年祭でにぎわう奈良。互いに隣り合う興福寺、奈良国立博物館、東大寺の3カ所で、仏像の収蔵展示施設の改装・建設が相次いでいる。いずれも照明や展示方法を工夫し、仏像と向き合う雰囲気に配慮しているのが特徴。若い人に根を下ろしつつある仏像ブームも追い風となっているようだ。
一体一体ごとに当てたスポット照明に、仏像が浮かび上がる。天井の蛍光灯を切ったことで、平板な明るさに埋もれていた仏像の個性が際立った。
ここは7月下旬に「なら仏像館」として新装開館した奈良国立博物館本館。1894年完成の重要文化財(旧帝国奈良博物館本館)で、「古寺巡礼」の著者・和辻哲郎をはじめ、会津八一、亀井勝一郎らが繰り返し訪れた建造物だ。
「改名して新装開館というと、せいぜい『髪形を変えた程度』に受け止められそうだが、これはわれわれ奈良博の決意表明のようなもの」と話すのは西山厚・奈良国立博物館学芸部長。
これまで常設展会場として、収蔵品、寺からの寄託品を展示していたが「特別展に比べて影が薄く、来場者数はいまひとつだった。パリのルーブルでもニューヨークのメトロポリタンでも、本来、その美術館が持つ収蔵品を目当てに人が集まる。奈良博も重要文化財・国宝を合わせて寄託品だけで約350と、十分な収蔵品がありながら、展示の仕方・工夫が弱かった」。
こうした反省を踏まえ、光量を調節できるスポット照明を導入した。開幕記念は「至宝の仏像 東大寺法華堂金剛力士特別公開」展。高さ3メートルを超す2躯(く)1対の金剛力士立像(国宝、8世紀)が、新装開館に花を添えている。
リニューアル成功の先駆けとなったのは興福寺の宝物展示施設、国宝館だ。1959年建造で、半世紀を節目に改装した。今年3月に新装開館し、5カ月で入場者数がすでに57万人を超えた。これまでは年間を通しても30万人を下回る程度だった。
集合した迫力
国宝12件、重要文化財8件など28件を展示している。なかでも目を引くのが昨年、東京・福岡・奈良3都県で約197万人を集め、さながら「仏像ブームの千両役者」となった観のある阿修羅立像(国宝、8世紀)。以前はガラスケースに入っていたが、じかに見られるようにし、ほかの八部衆と一挙に並べた。
「八部衆をはじめ十二神将、釈迦十大弟子といったシリーズものは群像として集まっているのが本来の姿。博物館に寄託するなど分散していたが、呼び戻した。単体でなく、集合したときならではの迫力が心を打つのでは」と多川俊映・興福寺貫首は語る。
こちらもより宗教空間の雰囲気に近づけるよう、照明デザイナーを起用した。「彫刻は、光の当たり方次第で表情が怖くも優しくもなる。天平彫刻の傑作・阿修羅像は、かすかにまゆをひそめている。その様子が伝承にあるように、戦闘に明け暮れるむなしさを映しているように見える。かと思えば、思春期の物憂げな表情を連想する人もいて、向き合う人の想像力をかき立てる」(多川貫首)
東大寺の駐車場の北隣に建設中の東大寺総合文化センターは、収蔵・展示施設としての東大寺ミュージアムのほか、古文書を扱う東大寺史研究所、図書館、華厳学研究所などを併せ持った複合施設になる。
ミュージアムは免震構造を備え、法華堂の日光・月光菩薩(ぼさつ)など塑像四体のほか、十二神将などを収蔵・展示する予定だ。「塑像は堂内に舞い込むハチが巣を作っている。傷みを食い止めようと、避難する意味もありお移しする。ただ完成後も空白のまま夏2回を過ごしてからでないと仏像を移せないので、展示は2011年からになりそう」と森本公誠長老は説明する。
(編集委員 岡松卓也)
豆知識
国立博物館、文化財に密着
国立博物館で地名を冠した施設は、東京、京都、奈良、九州と全国に4カ所ある。半分が関西での立地だ。全国の国宝と重要文化財の約半数が関西2府4県に集中していることと関係が深い。博物館には、明治初期の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)により、寺宝の維持が困難になった寺院から寄託を受け、散逸を防ぎ修復するという狙いもあったためだ。
奈良国立博物館には興福寺の八部衆、十大弟子、法隆寺の百済観音など国宝が所狭しと並んでいた。ただ戦後に寺社が収蔵施設の拡充を活発化。これに伴い寄託仏像の返還が進むと、博物館の存在感が薄れかねない。













