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未完の緑色レーザー、半導体で1―2年後実現――中村修二教授に聞く。

2009年05月18日 / 日本経済新聞 朝刊 このエントリーをはてなブックマークに追加

超小型プロジェクター 携帯に搭載可能に

 緑色半導体レーザーの実現へ向け、世界的な開発競争が激しくなっている。赤色と青色の半導体レーザーと組み合わせれば、携帯電話に組み込める超小型プロジェクターや自然に近い鮮やかな色の背面投射型テレビなどが可能になる。青色レーザーや発光ダイオード(LED)の実用化技術を先駆けて開発した中村修二・米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授に開発動向を聞いた。

 ――技術開発はどこまで進んでいるのか。

 「光の三原色のうち赤と青の半導体レーザーはあるが、同じ技術では緑色のレーザー光を出せない。ソニーなどが赤外線を出す半導体レーザーの光を、特殊な結晶を使って緑色に変えている。しかし、結晶が高価でコストを下げるのは難しい」

 「私たちは二〇〇七年に、波長が四〇〇ナノ(ナノは十億分の一)メートルほどの青紫色の光を室温で連続して出すことに成功した。共同研究相手のロームは四八一ナノメートルと緑色の領域に入るところまで進歩させている。ドイツの照明機器メーカー、オスラムもかなり進んでいる。みな、五三二ナノメートルの純粋な緑色を目指している」

 ――実現へのポイントは。

 「青色LEDと同じ窒化ガリウムの結晶を使っている。六角柱の結晶の側面を薄く切り出した基板を利用している点が違う。従来は結晶の上部を切り出して基板にしていた。結晶が成長しやすい半面、電荷(物体が帯びている電気量)分布の偏りが生じる。波長が長い緑の光に近づけるほど、発光効率が落ちて暗くなってしまう。新しい基板ではこうした問題はない」

 ――どうして緑色レーザーが必要なのか。

 「現在テレビに使われている蛍光体よりは狭いが、LEDが出す光には波長に幅がある。テレビの光源に使っても、自然の色とは少し違ってくる。レーザーは波長がひとつなので、より鮮明な色合いになる」

 「レーザーはLEDよりも明るく、プロジェクターに応用すると光源をさらに小さくできる。手のひらに載る商品が売り出されたが、携帯電話やモバイル機器に組み込めるようになる」

 ――レーザーと発光原理が同じLEDへの波及効果はあるのか。

 「LEDの発光効率も大幅に向上できる。照明に使う白色LEDは青色LEDに蛍光体を混ぜて塗って白に変換している。市販の照明用LEDは消費電力の三割程度の光しか出せておらず、研究室でも六割程度だ。私たちの技術を使えば、九割を超える水準に引き上げられるだろう」

 ――実用化へ課題は。

 「半導体で緑色レーザー光を出すのは一―二年で実現できるだろう。ただ、量産にはカベがある。現在使っている基板の大きさは約一平方センチメートル。量産するには直径五センチメートルは最低でも必要だ。基板を製造できるメーカーは三菱化学しかなく、同社も含めて材料メーカーの技術革新が欠かせない」

(聞き手は編集委員 青木慎一)

 ▼半導体レーザー 電子が多いn型と電子を抜いたホール(正孔)が多いp型の半導体を張り合わせた素子。電流を流すと電子と正孔がぶつかって光を出す。発光ダイオード(LED)も原理は同じだが、レーザーは光を内部で増幅するため明るい。LEDはある程度の幅を持った波長の光が集まっているが、半導体レーザは一つの波長で波がきれいにそろっている。

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