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素材の未来(上)汚れる地球、広がる舞台――LEDで乾燥地に野菜。
「月で製鉄」研究急ぐ 微生物使い排水浄化
1面から続く
「生産量はどれくらいか」「どんな野菜ができるのか」。昨年1月にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開かれた展示会。コンテナ内に収めたハイテク野菜工場システムを初出展した三菱化学の星島時太郎執行役員には、中東の政府系企業や投資家から問い合わせが相次いだ。
水使用量10分の1に
同社のシステムは太陽電池を電源とする発光ダイオード(LED)を照明に使い、工場のように屋内で野菜を効率栽培する。水は海水からつくり、さらに水処理膜でろ過して何度も再利用する。水の使用量を野外栽培の10分の1に削減できる。乾燥地帯や寒冷地で野菜が栽培でき、このほど中東のカタールで第1号製品を発売。寒冷地の多いロシアなどからも引き合いがあるという。
「月面製鉄」――。東京工業大学では基礎素材である鉄を月でつくろうというプロジェクトが進む。「理論上は月面で月の砂を1400度程度まで加熱すれば鉄は確保できる」。須佐匡裕教授は力を込める。月面での酸素の量は地球上の10のマイナス15乗分の1。月の砂に10〜15%含まれる酸化鉄を加熱して鉄と酸素に分解すれば、酸素はどんどん拡散してしまい後には純粋な鉄が残る。地球上では酸素量が圧倒的に多いので一度分解しても、再結合して酸化鉄になってしまう。
問題は反応速度。真空中で酸化鉄を熱で分解する実験は実施例が少なく、実際の効率が分からない。現在は鉄原子2個と酸素原子3個が結合した「酸化第二鉄」を分解する速度から類推する実験を続けるが、月面と同程度の酸素濃度を再現するのが難しく、実験は思うように進んでいない。
高炉に劣らず
ただ、須佐教授は宇宙航空研究開発機構(JAXA)や清水建設などと共同で、月の砂から地球上と同じく還元剤を使って鉄をつくり出すことにも成功している。月面の砂と同じ成分を再現した実験材料を黒鉛(すす)と反応させた。実験材料中の鉄分は2時間で10%から0・1%にまで低下。さらに重力が6分の1の月面で生産すれば、反応を邪魔するガスが素早く浮上して溶けた材料中から抜け出す。理論上は反応速度は5倍ほど上がり「現在の高炉に劣らないはず」(小林能直准教授)。
炭素分は月にはないため地球から持って行かなければならないが、加熱するだけの場合はエネルギーさえあれば鉄を生産できる。コストや量産面などで課題は多く、実現のめどは立っていない。それでも高強度で加工しやすく、リサイクルしやすい鉄は地球上で最も使われている。鉄の比重は7・8と重く、ロケットで運ぶには限界がある。この鉄を月で生産して豊富に使えれば月面居住の可能性は高まるはずだ。
そして忘れてはならないのが環境保護。トイレや風呂などの生活排水を垂れ流しにして汚染が広がれば、定住できない。水を使わないトイレなどを開発する正和電工(北海道旭川市、橘井敏広社長)は木炭で、家庭ごとに生活排水を浄化できる設備の開発に乗り出す。
木炭表面にいる微生物が排水中の汚れの原因となる有機物を分解する。木炭の表面が大きいほど有用微生物も増え、浄化能力も高まる。「下水処理場がない地域でも処理場以上に排水をきれいにできる」(橘井社長)設備を実用化する考え。
2050年には現在の68億人から100億人に達するともされる世界人口。人類は人口増大とともに居住地を増やしてきたが、深刻化する環境汚染などで砂漠や海中、宇宙での生活も真剣に検討される日が来るかもしれない。
それに必要な水やエネルギー、食料、空気、建材などを日本企業が供給することができれば、世界でのプレゼンスも高まるだろう。
【表】海外での主な大型製鉄所・化学工場の新増設計画
会社名 立 地 年産能力(トン)
鉄 鋼 鞍山鋼鉄集団 中国・遼寧省 500万
山東鋼鉄集団 中国・山東省 1500万
首鋼集団と河北鋼鉄集団 中国・河北省 1500万
韓国・ポスコとインドネシア・クラカタウスチール インドネシア・ジャワ島 600万
韓国・現代製鉄 韓国・忠清南道唐津 1200万
化 学 住友化学とサウジアラムコ サウジアラビア・ラービク 130万
米ダウ・ケミカルとサウジアラムコ サウジアラビア・ラスタヌラ 130万
三菱グループ、SABICなど サウジアラビア・アルジュベール 130万
中国石油化工集団(シノペック) 中国・天津市 100万
独BASFとシノペック 中国・江蘇省 74万
(注)日本の関係各社への取材から作成。一部稼働済み、政府未認可も含む。能力は鉄鋼は粗鋼、化学はエチレンベース













