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壁を越えて――ハイテク野菜工場、世界で売る、星島時太郎さん(拓くひと)終

2009年06月02日 / 日本経済新聞 夕刊 このエントリーをはてなブックマークに追加

星島時太郎さん(61)

縦割り崩しひらめき生かす

 「砂漠の地下がいいんじゃないかな」。そうひらめいて、中東諸国に売り込みをかけるビジネスマンがいる。三菱化学執行役員の星島時太郎(61)。売るのは太陽電池で発電し、発光ダイオード(LED)照明を光らせるハイテク野菜工場システムだ。1月にアブダビでの展示会に初出品、いま政府系企業など10社との商談が進む。

 笑みを絶やさず、商談、宴席で相手を引き込む。「環境、食料、エネルギー。人類が直面する諸問題を考えたら野菜工場に行き着いた」。話のスケールを大きくするのも得意だ。

 もともと研究者で、自動車や建設資材などの素材として使われる炭素繊維の開発に長くかかわった。ただ研究室に閉じこもるタイプではなく、高速道路の橋脚補強用に炭素繊維シートを販売することなども発案。売り上げ拡大に貢献した。事業が本格的に軌道に乗ってきたところで販売子会社に出向した。

 「よくしゃべるから、研究開発より営業向きと思われたかな」。出向してからは自治体や建設会社などに道路防水用樹脂などを売りまくった。すっかり慣れたころ、本社からの呼び出し。「面白いやつがいる」との評判を聞きつけ、新規事業である太陽電池の責任者として白羽の矢を立てたのだ。出向から8年、59歳での復帰に周囲は驚いた。

 ただ本人に迷いはなかったという。生来の前向きさにビジネスマンとしての経験が加わり、経営者として道なきところに道を開く自信はあった。「技術より、まず顧客がどう使うかを考えればいい」。人との会話でヒントを得たアイデアをびっしり書き込んだメモ帳が、発想の下地をつくる。

 さて太陽電池をどう売るか。他社に出遅れた状態で、野菜工場との組み合わせに行き着いた。農業もLEDも担当外だが、従来の枠組みを超えたところに商機があると考えたのだ。伝統ある大企業だけに、常識破りの星島には冷ややかな視線もある。しかし意に介さない。

 「縦割りに縛られていたら面白い仕事なんてできないから」。大きな口で豪快に笑い飛ばす。「次は北極に売ろうか」。領域は無限に広がっていると信じている。(敬称略)

文 磯貝高行

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