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家電量販に女性目線、美容家電、POP・ブログ使い販促。
男性が購入客全体の7割程度を占めるとされる家電量販店。その売り場に女性の視点が反映され始めた。「電気製品はなんだか難しい」「大きな買い物はお父さんがいないと」という女性像はもはや昔のもの。パソコンや携帯電話に慣れた若年層に電子機器への苦手意識はなく、社会進出が進み購買力も増す一方だ。未開拓の収益源の深耕に向け、家電店の改革が加速している。
東京都昭島市のショッピングセンター「モリタウン」内に販売員が女性だけの電器店がある。中堅家電量販店のセキドが3月に開いた「でんきのセキド」だ。売り場面積は約100平方メートルと小さく、同社の通常店舗と比べると5分の1〜10分の1程度という実験店だ。
店の顔ともいえる、通路に面した店舗の入り口正面に並ぶのは、ドライヤーなどの美容家電と携帯電話。店のあちこちには女性誌の表紙やハート形の店頭販促(POP)物がちりばめられている。威勢のいい呼び込みの声はないが、店内には女性客の姿が絶えない。
8月中旬、近所に住む吉沢こずえさん(52)、優紀さん(25)の親子はPOPに目を引かれ、通りがかりに入店した。「ピンクなど女性が好きな色使いをしているのも入りやすかった」という。
自慢の売り場を飾るのは現場の販売員自身。あらゆる商品に張られたPOPは多くが店員の手書きで「私も使っています!」などと親近感をもてるように工夫している。定期的に購入する女性誌の気になるページも切り抜いて活用する。
6月には携帯電話向けのブログも始めた。2人の販売員が交代で更新する。「紫外線で髪のぱさつきが気になりますよね」などと、女性に身近な話題を提供するのが需要を掘り起こすコツだ。接客の際にこれらのPOPやブログが話題になることも多く「顧客と距離を縮める手段として有用」(同店の石坂みどりチーフ)という。
品ぞろえでも現場の従業員の声が重用される。7月、20代の販売員が熱望して仕入れたマッサージ機能付きクッションは、店頭に並んだとたんに1カ月で50台以上売れるヒット商品になった。その後、通常の全店にも導入した。家電事業本部の山口仁志営業管理課長は「ネットや雑貨店で人気の製品ということだったが、本部では把握していなかった」と、流行の先端をとらえる女性の鋭い感性に舌を巻く。
同店の商品構成は保湿美顔器、除毛器、髪形を整えるコテなど理美容家電が点数ベースで5割を占める。アロマオイルの芳香器などの雑貨家電が2割で、携帯電話、テレビ、電子レンジなどは残り3割にすぎない。
美容家電は価格下落が激しくなく、利益が確保しやすいのがメリット。同店の粗利益率も通常の店舗に比べ5ポイント程度高い。女性向け商品の販売力が利益に直結することを如実に体現している。
収益性の高い小型店形態を確立できれば、賃料などが高い都心部などへの出店余地が広がる可能性もある。女性向けの2号店の計画はまだ固まっていないが、寡占化が進む業界にあって、生き残りに向けたセキドの切り札の一つとなりそうだ。
カメラ 男性とニーズに違い
「白とゴールド、どっちがいいかな」「お客様の服装なら、白の方が映えると思いますよ」
こんなアパレル店のような接客がビックカメラで珍しくなくなった。舞台は各店に設けた、女性向けに陳列などを工夫したカメラ売り場。小型・軽量で扱いやすく、カラフルなデジタル一眼カメラなどが豊富に並ぶ。
「カメラ女子」という言葉が一般化するほど、20〜30代女性の間で高機能カメラの人気が高まっている。売り場にもデジタル一眼を買い求める女性の姿が目立つ。変化を迫られたのが接客だ。
従来、デジタル一眼の客は9割以上が男性で、それも写真を趣味にする上級者が多い。接客の話題はシャッタースピードなど本体性能のほか、レンズごとの違いや撮影技術の相談がほとんど。「服とのコーディネートなんて考えたこともなかった」(営業部カメラチームの野村憲広係長)
女性客は違う。初心者が多いため、まずコンパクトカメラなどとの違いの説明が重要だ。そのため売り場には実際にデジタル一眼で撮影した写真などを多く展示。6月には社内に女性販売員による「カメラ女子部」を創設し、実体験を基に基本操作などを女性客に説明できる体制を整えた。
ファッション性も鍵になる。売り場でカメラを服にあてがう客が多いため、ビックは姿見の導入を検討中。カメラ用バッグも、リボンなどがついたおしゃれな商品の人気が高い。本体に付けるアクセサリー類は女性販売員の意見を聞いて仕入れており、品ぞろえは女性向け売り場を設けてから10倍に増えた。
塚本智明常務は「どんな情報が家電購入の決め手になるかには、男女差がある」と話す。性能や価格の話題が多い男性客に比べ、女性には実際の利用場面がイメージできるような接客が有効だ。「撮った写真を見るために」とデジタルフォトフレームやアルバムの製本サービスを案内すると、多くが興味を示す。
「女性のニーズをくみ取る売り場ができれば、パソコンなど他の分野でも女性客を増やせる」(塚本常務)。現在1割程度の女性販売員比率を、いずれ3〜4割に引き上げたい考えだ。
女性社員の登用を加速 品ぞろえに生かす
女性客の増加に伴い、量販店では女性従業員の存在感も増す一方だ。
ベスト電器の高野しのぶ係長(31)は、30人強いる同社商品部バイヤーの紅一点。昨年9月に理美容関係商品の担当に着任した。「品ぞろえに女性の視点を生かす」(経営企画部)狙いからだ。
効果は早速出ている。高野さんは今年に入り、一部店舗に保湿用の「フェースマスク」や美容ジェルといった雑貨の品ぞろえを拡充。メーカーに対しては、来店客が効果を実感できるようにお試し用の実機を並べさせてほしいともちかける。販売員にも「現場の声が届きやすい」と好評だ。
高野さんは「女性向け商品には、男性にはわかりにくい長所がある」と話す。本体の色合いについて取引先の男性営業員に提案すると、しばしば「勉強になります」と言われる。同社ではドライヤーなど美容家電の売れ行きが軒並み前年の2ケタ増で推移している。
業界では女性の登用が加速している。昨年11月にケーズホールディングス、今年4月にはエディオンに初の女性店長が誕生。ヤマダ電機では女性管理職が5年前の1人から50人強に増え、女性社員数も8割以上増えた。
主な理由は育児休業制度の整備・利用が進み、女性がキャリアを積み上げやすくなったため。もちろん、女性客開拓の狙いもある。「理美容分野に限らず、同性の販売員に接客してもらいたいという女性客は多い」(ベスト電器)
ケーズの林政広社長室長は「働く女性が増えたことも関係している」と指摘する。お金はあるが時間がない30代前後の女性には自動ロボット掃除機や高機能美容家電の人気が高い。「仕事で帰りが遅いなら、録画機能付きテレビを薦めるのも有効」(林室長)など主婦層と異なる需要がある。これらニーズは、自らも働く女性である女性社員の方がくみ取りやすい。
ある大手家電量販では正社員の男女比率が男性9、女性1。女性客がさらに増えれば、この比率も変わりそうだ。
(中川雅之)












