ニュース
新たな設計図(中)量より質で勝負――戦略投資へ絞り込み(ブランド変調)
昨年11月、家電量販店の店名から「エディオン」が消えた。「デオデオ」など主に西日本で5チェーンを展開する家電量販2位のエディオンが、関東開拓のため企業名を冠して2007年に立ち上げた新チェーンだ。
東京都杉並区に1号店を開く前には店長が近隣200軒をあいさつに回り、きめ細かいサービスも売り物にした。だが知名度は上がらず、チェーン展開は途中で凍結。08年度に135億円の最終赤字に転落する一因にもなった。
縮む市場に対応
久保允誉社長は「なじみのない店舗ブランドでは長く使う家電製品の消費者を呼び込めなかった」と反省する。代わりに看板に据えるのは06年に出資した東京・秋葉原の老舗、「石丸電気」だ。採算が比較的良い店舗を首都圏で知られた「ishimaru」に切り替え、再スタートを切った。
国内企業は従来、店舗や商品に次々と新しいネーミングを施し、多くのブランドを抱えてきた。競合他社に見劣りしない品ぞろえを意識し、絶えず関心を引くためだ。バブル崩壊後も、縮小するパイの奪い合いでむしろその勢いは加速した。しかし08年以降の不況を機に、伝統や競争力がある商品ブランドへの絞り込みが本格化している。
サッポロホールディングス傘下のサッポロ飲料。より規模の大きい他のビール系飲料メーカーを意識し、「負けじと商品を増やした」(古林秀彦ブランド戦略室長)ことで07年度まで3期連続の営業赤字に陥った。そこで08年、2つあったウーロン茶の製品を「武夷山烏龍茶」に一本化し、昨年はコーヒーなど3分野でも集約した。宣伝・販売のコストを身の丈に合わせたことで利益は上昇傾向にある。
希薄化を防ぐ
セイコーウオッチとシチズン時計は希薄化を防ぐため商品ブランドを集約しており、セイコーは一時の20から「グランドセイコー」など10に半減させた。「ブランドは一朝一夕につくれない」(セイコーウオッチの庄山昌彦取締役)として、対象を絞って強化していく。
販路を見直す企業もある。健康への効能をうたう「養命酒」を作る養命酒製造は、薬局で売る一般用医薬品(大衆薬)と酒店向けの2つの商品ラインだった主力ブランドを薬局向けに絞り込む。1970年代のテレビCMで知名度を上げた養命酒の主な顧客は60代以上で、薬局での購入が中心。2ラインの維持は非効率で、ブランドイメージも拡散すると判断した。酒店向けには今月から新商品を販売する。
商品ブランドの育成や入れ替えなどの戦略では、海外企業が大きく先行している。1月に英キャドバリーを119億ポンド(1兆7000億円)という高額で買収することを決めた米食品大手クラフト・フーズ。ガムの「クロレッツ」などキャドバリーが持つ有名ブランドを手に入れるのが狙いで、一方で北米で知名度の高い冷凍ピザ事業は売却した。学習院大学の青木幸弘教授は「日本企業も、体系的なブランド戦略を考えなくてはならない」と話す。
ただ社員や取引先、ユーザーへの配慮もあり、どの企業も一直線にブランドを再編できるわけではないようだ。06年にカネボウ化粧品を傘下に収めた花王。化粧品のブランドは国内外で76に膨らんだままだ。
10年度から約20を重点的に販売する戦略対象に選ぶが、廃止を決めたものはない。神田博至取締役は「育成の投資をしないブランドは、結果として消えていくこともあるだろう」として、早急な決断は避けると強調している。












