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物流ジャパン総力戦――コンテナ用ICタグ(マンスリー編集特集)

2010年07月23日 / 日経産業新聞 このエントリーをはてなブックマークに追加

世界の荷 位置ピタリ  国際標準規格、日中で推進  上海起点、変革の芽

 日本郵船とNTT、三井物産は中国最大の港湾運営会社、上海国際港務(SIPG)と組み、2012年をメドにICタグ(荷札)を使った荷物の位置情報把握システムを開発する。世界でこのシステムが導入されれば、配送や通関業務が大幅に簡素化でき、物流コストの抜本的な削減につながる。日中両政府も後押ししており、官民で連携して国際標準規格の構築をめざす。

 SIPGはコンテナ取扱量で年内にも世界最大のシンガポール港を追い越す見通しで、世界の港湾で最も勢いがある。一方で郵船は世界のコンテナ船社で11位前後にとどまるが技術力に定評がある。

 世界のコンテナ貨物輸送の市場規模は20兆円強とされる。現状では荷主や海運、陸運などの業種がバラバラの規格を使っており「1つの荷物にたくさんのICタグがくっつき、誰も物流すべての流れを把握できていない」(郵船)。実現すれば世界で数千億円から1兆円近い規模の経済効果になるという。

 郵船が開発に乗り出そうとしたのは04年ころ。海上コンテナにICタグを取り付けて位置情報を管理しようとしたところ、ICタグの価格が1個1万円だったという。であれば「自分たちで開発しよう」(郵船の石沢直孝R&D事業開発室長代理)という話になり、NTTと三井物産に声をかけ、開発に向けた準備が始まった。

 開発するICタグの価格は1個500円程度を想定。35けたのID番号を割り振り、コンテナ貨物に取り付ける。荷主や海運、陸運などの企業に読み取り装置を事前に渡しておき、貨物情報を共有する。開発は順調に進んだが日本の企業だけでは広がりに限界があった。

 そのころ中国でも同様の取り組みが進んでいた。世界2位の港湾運営会社、SIPGだ。それまでは独自開発を進めていたが「日中が組んだほうが普及が早く進む」(包起帆・副総裁)と判断。郵船グループと"共闘"することで08年秋に大筋合意した。

 郵船やSIPGなどは管理用ソフトの販売で収益をあげたい考え。それ以上に関係者との利害調整の過程で構築された人脈は「今後の新たなビジネスチャンスにつながる」(郵船の石沢・事業開発室長代理)。

 日中政府も支援を表明し、工業分野の国際規格を定める国際標準化機構(ISO)に提案し、既に規格を統一することで関係国や企業の承諾を得ている。11月にまとめるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の域内成長戦略にも日中の技術を用いたICタグの国際標準化を盛り込む方針だ。

 郵船、SIPG両社の強みに加え、政府を巻き込んだ"日中連合"の動きに対し「ライバル企業も動きにくくなっている」(日本政府関係者)という。ただ、利害関係者が多いだけに油断は禁物。郵船やSIPGには慎重な根回しと根気強さが求められる。物流業界の大変革につながるか。関係者の期待は高い。


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