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ヤマト運輸の配達員支援システム――3種の電子マネー対応(ICT構築最前線)

2010年03月03日 / 日経産業新聞 このエントリーをはてなブックマークに追加

地域密着、新端末で追求

 ヤマト運輸が宅配便事業の根幹を支える情報システムの刷新を進めている。配達員が携帯する情報端末を改良し、試験期間を経て6月に約5万5000台を全国展開。各端末から接続するデータベースシステムの整備なども進め、9月には同システムを活用した新たな会員向けサービスも始める。狙うは「地域密着」。新端末で配達員が顧客の要望にきめ細かく対応できるようにする。

 「無線LAN(構内情報通信網)につながらない」。年明けから5000台規模で始めた新端末の試験運用で、毎週のようにソフトウエアの不具合が表面化している。すぐに新端末の操作履歴を解析しソフトを手直しすること、2月末までに計9回。全国展開に耐えるまで作り込む作業は今も毎日進んでいる。

 約300億円かけて整備している次期システム「第7次NEKOシステム」の一端を担う新兵器が、この端末だ。集配データの入力や決済などの機能を持つほか、サービス向上を狙い「エディやナナコ、ワオンといった主要3規格の電子マネーで決済できるようにした」と、経営戦略部経営戦略課の青島宏康係長は話す。

 端末開発は3種類の電子マネーに対応できる技術を見込み、パナソニックシステムネットワークス(東京・目黒)と協力。グループ会社のヤマトシステム開発(東京・江東)がソフト部分を受け持つ。複数種類の電子マネーを決済できる端末の例がなく、画面デザインなどで「規格固有の方式を崩さずに操作感を統一するための擦り合わせが難航した」と、経営戦略部情報システム課の野口修一係長は振り返る。修正ソフトなどを素早く取り込むため、今回は無線LANも初めて採用。毎日が試行錯誤の連続だ。

 新端末は、集配情報を携帯電話経由でサーバーに送るだけでなく、配達員の出退勤管理などの機能を満載。基本ソフト(OS)を国産の「アイトロン」から米マイクロソフトの「ウィンドウズ」に代えたことに伴い、1000種類を超す応用ソフトを移植した。ただし大量データを管理する能力を新端末に備えることは難しいので、インターネット経由でデータベースの情報を端末に取り込む方式に改める。

 昨年初夏から年末までの作業の末に、ソフトの大枠は一通り完成。並行して開発するデータベースシステムが9月にも稼働すれば、宅配便サービスの利便性は飛躍的に高まるという。

 具体的な活用法は今後検討するが、例えば新端末と配達先の住所や集配履歴などの情報を組み合わせれば、配達先が届けてほしい時間に訪問しやすくなる。

 高齢者の独居世帯などに生活支援のサービスを展開できないかというアイデアもある。個人会員向けのサービスだが、配達員は常に地域を回っているので午前中に顔を合わせた際、新端末からネットスーパーなどに食品や日用品を注文して午後に届けてもらう、といったことも実現できる。

 2010年度を最終年度とするグループの中期経営計画の柱は「地域密着」。次期システムの原点も、ここにある。

 中計で掲げる、10年度の連結売上高を06年度比25%増の1兆4500億円に引き上げる目標に向け、「新システムは大いに役立つ」(青島係長)。そんな期待を背負いながら、次世代の「猫」は、着々とつめを研いでいる。(岩崎航)

【図・写真】新端末から無線LANでデータを転送(東京都中央区のヤマト運輸の集配拠点)

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