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第5部当世塾事情(4)縮む市場、淘汰の嵐――生徒争奪、規模の戦い(学びいま未来)
埼玉県の中堅都市にある学習塾。午後8時過ぎ、経営者の女性講師(63)が授業を始めた。受講生は男子中学生が2人だけだ。
塾を始めて約20年。丁寧な教え方が口コミで評判になり、最盛期には30人近くが通った。ところが数年前、近くに大手系列の塾が次々と進出、生徒は8人に減った。「大量のチラシで生徒を集める大手のやり方はまねできない」。今の生徒が卒業したらたたもうか。そんな思いも頭をよぎる。
塾の存在感が増す中で、街の個人塾は受難の時代を迎えた。「60歳を過ぎた経営者も多く、後継者もいない」(代々木ゼミナールの高宮敏郎副理事長)。高宮副理事長によると、廃業と新規参入で3年間で塾全体の2割が入れ替わっているという。
理由は少子化と塾間の競争激化だ。18歳以下の人口はこの10年で1割以上減り、塾・予備校の市場規模は9140億円(2009年度、矢野経済研究所調べ)と02年度より8%減った。
急速に勢力を伸ばしているのが大手塾のフランチャイズ(FC)塾だ。明光義塾は全国で1600校以上、ナガセ(東進衛星予備校など)が800校......。競うように全国各地で教室を開く。
武器は宣伝による知名度の高さと経営ノウハウ。開業資金は1千万円程度と他業種より割安で、脱サラ組の参入も少なくない。東京都内でFC塾を経営する40代男性は「飲食店も経営したが、塾の方が仕入れもなくリスクが少ない」。
再編の動きも急だ。代ゼミはSAPIX中学・高校部をグループ化、今春に小学校部を加えた。河合塾も中学受験の日能研と合弁会社を設立、ナガセも中学受験の四谷大塚をグループ化した。目立つのが、大学受験予備校が小中学生向けの塾をのみ込む動き。子供を早めに囲い込もうとする思惑がみえる。
「お越しいただき、ありがとうございました」。東京都足立区の明光義塾竹の塚教室。仁科岳之教室長(39)は、自分の写真が印刷されたはがきにメッセージを書くのが日課だ。あて先は塾の見学に訪れた生徒の自宅。「印象を少しでも良くしたい」と寸暇を惜しんで机に向かう。
周辺は大手を含め学習塾が立ち並ぶ激戦地区だが、同校は生徒約200人とトップクラスの規模を誇る。生徒の誕生日にはお祝いのカードを教室に張り出し、職員の電話応対の声量に気を配る。「勉強を教えるのはもちろん、サービスも重要」と仁科教室長。
行き着く先は価格競争だ。神奈川県を中心に展開する中萬学院は3月、小中学生コースの料金を約25%下げた。福岡市では、広島市が拠点の鴎州コーポレーションが格安料金を掲げて進出、市内の塾が対抗して値下げ戦争がぼっ発した。
少子化、規模の二極化、優秀な講師の確保......。塾は様々な難問に直面する。「どの塾も保護者に選んでもらえる姿を模索している。ただ、付加価値を高めないと生き残れない」と代ゼミの高宮副理事長。塾の再編、淘汰の嵐はこれから本番を迎えるとみる関係者は多い。
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