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大林組――「建設共通パス」で就労履歴DB化(先取り現場技術)

2010年01月28日 / 日経産業新聞 このエントリーをはてなブックマークに追加

技能に応じた差配 容易に

 川崎市にあるNEC玉川ソリューションセンターの建設現場。工事を請け負う大林組の現場事務所では、建設作業員らがICカードを定期券のように読み取り装置にかざして出入りする。大林組や竹中工務店などのゼネコン(総合建設会社)が5日に導入した「建設共通パス」だ。このシステムは単に作業員の入退場を管理するだけではない。その狙いは。

 「作業員の力量を年齢だけで判断すると大変なことになる。技量レベルの把握は苦労の種」。現場責任者である大林組の斉藤司・理事所長は、専門工事会社などの作業員を束ねる難しさをこう打ち明ける。

 建設業界には中途採用の人材も多い。年齢や経験年数だけでなく、過去にこなしてきた仕事の履歴が一目で把握できれば、工事全体を差配しやすくなる。建設共通パスは、どんな現場で経験を積み、どんな資格や免許を持っているかをデータベース化する仕組みだ。

 この工事現場で大林組が束ねる下請け業者は330社。進ちょく状況によって業者は頻繁に入れ替わる。今後、データベースに人材の情報が蓄積されていけば、熟練者が担当すべき作業を経験年数の浅い作業員に担当させるような手違いも減る。工事現場の安全管理にも役立つ。

 大林組が所属する産学連携の「就労履歴管理制度研究会」で建設共通パスの検討が始まったのは3年前。研究会の幹事は竹中工務店で、鹿島、清水建設、三井住友建設もメンバーだ。大学からは東京大学の野城智也教授、芝浦工業大学の蟹沢宏剛教授の研究チームが参加している。

 新システムはまだ実験段階だが、大林組は竹中や鹿島などとも共通の人材データベースを構築し、すでに100人分の情報を蓄積している。これまでゼネコンは各社個別にデータベースを用意していたが、高度な技能を持つ作業員は複数の工事現場を渡り歩くため、各社共通のデータベースを構築し、情報を共有した方が情報の価値は高まる。

 システム稼働から1カ月近くたち、複数のゼネコンの工事現場で働く作業員の情報を一元管理できることが確認できている。既存のデータベースとも連動して、人材情報を扱うシステムが稼働できた背景には、情報セキュリティー技術の向上がある。データ容量の小さいICカードに情報を蓄積するのではなく、データセンター側に情報をためて、インターネット経由で各現場から情報を引き出せるようにしたことで情報管理が容易になった。

 メリットはゼネコン側の労務管理面だけでなく、現場で働く作業員にもある。建設共通パスで自分が身につけた技能や資格をゼネコン側に証明できるためだ。東大の野城教授は「若い作業員が技能を身につけてもキャリアアップできない解決策になる」と指摘する。

 大林組などは今後、データベースの運用主体となる「就労履歴管理制度推進協議会」を発足させ、建設共通パスを2012年に建設業界に本格導入する計画だ。日本建設業団体連合会、建設産業専門団体連合会などの業界団体も研究会に加わり、業界横断的な取り組みに発展する下地ができつつある。国土交通省も「建設労働者の視点に立って、業界の標準化につなげて欲しい」(建設市場整備課の松本貴久・労働資材対策官)と期待する。

 建設現場は労働者の高齢化が進み、若い担い手の不足が深刻化している。研究会に参加するゼネコンからは「将来は英語や中国語に対応したシステム開発も必要になる」との声もあがる。建設現場の課題をIT(情報技術)を活用して解決する試みは、緒に就いたばかりといえそうだ。

(山根昭)

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