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ネクスト社長井上高志氏――住宅サイト、営業力で“増築”(起業人)
売買の情報格差解消
インターネット黎明(れいめい)期の1995年に横浜市内のワンルームマンションで産声を上げたネクスト。不動産情報サイト「HOME,S」は業界の草分け的存在で、同社は業界最大手に登り詰めた。2006年には東証マザーズに上場。社長の井上高志は「不動産市場における買い手と売り手の情報格差是正」を旗印に掲げ、サービスを拡充してきた。
「人生で『長』の付く役職に就いたことがなかった」。井上は若いころを振り返り苦笑する。子どものころから引っ込み思案で班長や委員長といった役職を避けて通ってきたためだという。大学生になっても性格は変わらず、漫然とした日々を過ごしていたという。
転機が訪れたのは大学3年の時。当時はバブル期で就職活動は完全な売り手市場。しかし従業員35人のベンチャー企業の面接に訪れたところ、不採用。集団面接を一緒に受けた学生の話す内容を聞き「いかに自分がいいかげんな人生を歩んでいたかを思い知った」。
この体験を契機に井上の考えは変わった。「一大事業を成し遂げたい。入社して5年で起業する」。ビジネスモデルは決まっていなかったが、修業の場としてリクルートコスモス(現コスモスイニシア)に入社した。
最初に配属された新築住宅の販売員という立場が井上の人生観を方向付けた。担当した若い夫婦の条件に合う物件が見つからない。夫婦の落胆した表情を見た井上は他社が出した新聞の折り込み広告を収集。実際に見学したうえでその中から選んだ物件を夫婦に紹介した。「この物件に決めたよ。ありがとう」という言葉が胸に響いた。
「不動産業界は売り手と買い手で情報の格差がある」。この情報の格差を埋めるビジネスを志した。そのためには物件情報をデータベース化し、ネットワークで顧客が自由に閲覧できるシステムが必須。注目したのが当時、生まれたばかりのインターネットだった。
会社を飛び出したのが1995年。独学でネットの技術を磨きつつ、独立を果たした。不動産屋を訪問し、店主に2時間以上かけてネットの仕組みを説明。その上でホームページに掲載する物件を預かる。図面以外はすべて手で入力。当時は同様のサイトなど存在せず地道に顧客を開拓する以外の方法はなかった。
顧客は徐々に拡大したが、競争も激しくなった。大手企業が住宅情報サイトを相次いで立ち上げ、顧客の伸びが頭打ちになってくる。危機感を募らせた井上は「現在の顧客数1000件を1年で倍にする」と自らを奮い立たせるように宣言。自分が営業部隊の責任者となる代わりに「目標が未達の場合は社長を退く」と公言した。
井上は新たな営業手法を導入した。まず電話をかけて直接訪問する方法を禁じた。ファクスやメール、セミナー、講演会などの販促活動で会社の知名度を高め、顧客から問い合わせが来るように切り替えた。
「唯一、見る数字は新規の顧客開拓数だけ」と営業部隊に通達。目標とする指標を明確にし、問い合わせに対するマニュアルは自ら作成した。
この営業スタイルが奏功して顧客数が一気に拡大。賃貸・不動産売買の加盟店は1万店を超えるまでになった。紙媒体からネットへの物件掲載の切り替えは加速。2010年3月期の連結売上高は前期比26%増の112億円、経常利益は同77%増の17億円と過去最高になる見通しだ。
次の目標は「ライフステージ全般にかかわる情報インフラの構築」。不動産投資や介護までサービス対象を拡大する一方、地域情報を共有する交流サイト(SNS)も開設した。「人生の重要な選択をする際に情報不足で妥協する人を少なくしたい」。井上が抱く夢の実現までやるべきことはまだ多い。=敬称略
(中谷庄吾)
いのうえ・たかし 91年(平3年)青山学院大経卒、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。95年ネクストホーム創業。97年ネクスト設立。06年東証マザーズ上場。横浜市出身。41歳。










