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竹中工務店――真下に地下鉄、マンション免震化(先取り現場技術)

2009年12月10日 / 日経産業新聞 このエントリーをはてなブックマークに追加

外観そのまま「基礎」大手術

 東京メトロの表参道駅から伊高級ブランド「プラダ」の路面店を通り過ぎると茶色いタイル張りの外壁が見えてくる。11月に全面リニューアル工事が完了したばかりの高級賃貸マンション。この物件を所有する王子製紙系の王子不動産(東京・中央)は竹中工務店に外観を変えずに耐震改修を施す工事を発注した。だがマンションは地下鉄の真上に建ち、工事は難航した。

 「これは『ビンテージマンション』。外観も南青山の街になじんでおり、建て替えでなく全面改修を選んだ」。王子不動産の新藤裕士賃貸・管理グループマネージャーは築37年の「王子ホームズ青山」のデザインへのこだわりを強調する。1972年当時は外国人専用の高級住宅で、新築工事も竹中工務店が担当した。改修は周囲の高級賃貸住宅に対する競争力を維持する狙いもある。設備や内装も新しくなった住戸は50戸。月額賃料が100万円以上の部屋もある。

 5年前に実施した耐震診断の結果、王子不動産は耐震補強を含む改修を決断。当初、竹中工務店は1階部分を免震化する案や柱と柱の間に筋交いを入れて補強する案を示したが、王子不動産は「外観のイメージを損なう」との理由で再検討を求めた。「外観を変えない」という条件を満たすには地面を掘り返して建物を支える基礎部分を免震化するしかないが、問題はマンションの真下にある東京メトロ千代田線の地下鉄トンネルだった。

 マンションを支えるコンクリート製の杭(くい)が地下鉄をまたぐ格好になっている条件下での基礎免震工事は極めて珍しい。同工事は「免震層」と呼ぶ地下空間を設けて52本ある杭を4本ずつ切断し、ジャッキで支えながら杭に積層ゴムの免震装置をはめ込む。

 地下鉄トンネルに影響を与えないよう新たに杭を追加し、建物を独立して支持するように配慮もした。

 最も手間がかかったのは新たに設けた免震基礎だ。建物全体を「受け皿」で支えるように擁壁や耐圧版を設置するが、地下鉄トンネルで分断されるため、地震で建物にかかる力を制御する仕組みが複雑になる。設計担当者は有限要素法(FEM)と呼ぶ数値解析の手法を使って分析。耐圧版の厚さを最大2メートルにするなどの工夫をした。

 2006年から実施設計を始め、着工したのは08年。「東京メトロとの調整、建物の調査・分析にも入念に時間をかけた」(設計部の三宅拓課長代理)。

 総工費は約30億円。建て替えても同じような金額が必要だったはずだが、顧客側は良質な建築物を長く大切に使うストック型社会の発想にこだわった。竹中工務店などのゼネコン(総合建設会社)も長期間使える「サステナブル建築」を提唱し始めており、今後、建物の資産価値を向上させる改修工事は一段と重要な分野になるだろう。

 外壁のタイルは当時の担当者が特注した有田焼。建物を使い続けられるようにする技術は建物を長く所有してきた顧客の思い入れにも応える必要がある。その技術は手間をいとわず、創意工夫を重ねる現場の技術者の姿勢から生まれる。マンションの地下で続いた工事は外からは見えないが、青空に映えるマンションの外壁がそのことを物語る。(山根昭)

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