ニュース
電子図面で施工管理、建設現場、iPadで進化――大成建設、大林組。
大成建設 下請けと情報共有
大林組 工事記録、その場で
IT(情報技術)の浸透でビルやマンションの建設現場が大きく変わり始めた。建築現場にタブレットを持ち込み、電子図面を使いながら施工や品質管理するゼネコン(総合建設会社)が登場、これに合わせて設計や施工図を元に3D(3次元)などで、施工や維持管理の手順を示すビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)と呼ぶ新技術も普及し始めた。最も電子化から遠いとされてきた建設現場をITの普及が進化させようとしている。
千葉県内のガス会社から受注したオフィスビルの建築現場。この現場から、電話帳ほどの厚みのある図面を小脇にかかる現場監督の姿が消えた。代わりに米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」の画面を指先で操作、必要な図面を効率的に引き出していく作業の様子が日常風景となった。
大成建設は現在、建設現場のIT化を猛烈なスピードで進める。設計図や施工図はすべて電子化して工事の下請け企業となる専門工事会社にもデータを送って情報を共有、iPadを使って効率的に仕事を進める体制に切り替える計画だ。
これまで建設現場で設計や施工手順を把握しているのは現場監督クラスの一部の人だけ。作業員は、監督者の指示に従うのみだったが、iPadなどタブレットを使えば、閲覧が簡単な分、作業員も設計や施工の情報を把握、手順を頭に入れて仕事を進められる。「理解したうえで仕事をするのと、単に指示に従うのとでは、作業効率が全く違う」。
このため大成建設はソフト開発のフェンリル(大阪市)と提携、設計・施工関連のデータを電子化、iPadなどのタブレットに送るための専用アプリ(応用ソフト)の「フィールドパッド」を開発、1500円の低価で下請け企業の約5000社に導入を促し始めた。
今後はBIMを使い施工の段取りなどをタブレット上で立体画像で示しながら建設現場の作業員に手順を示していくなどの取り組みも始める。設計図や施工図を十分に読み込めない下請けの作業員などにタブレットを配布し、画面を見せながら指示すれば、施工ミスを食い止め効率を大きく向上させることが可能になる。
大林組が施工を担当する都内のビル。ここでタブレットを使い日々の事務作業が大きく削減する取り組みが始まった。毎日、工事事務所で作製することが義務付けられている品質管理記録表をタブレットを使い建設現場で作製してしまおうという取り組みだ。
品質管理記録表の作製というのは建設現場の要所ごとに施工品質を確認し、設計図に盛り込んでいく作業。それぞれのポイントで写真を撮り、鉄筋の組み込みが甘くないか、コンクリートの乾きは十分かなど施工の状況を確認しながら設計図に写真を貼付していく。
これまでは各ポイントで写真を撮影、事務所に戻って品質管理記録表を付けた後、また、現場に戻り確認作業を続けるといった作業を繰り返していた。20階を超える高層ビルなどでは行き帰りに膨大な時間がかかっていた。これをタブレットを使った現場での作業に切り替えることで「事務作業の時間もストレスが大きく減った」という。
▼ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM) 建築物の企画、設計、見積もり、施工、維持管理までの一連の業務をコンピューターで管理する情報システム。2002年に欧米の3次元CAD(コンピューターによる設計)メーカーが提唱した。米国では05年ごろから普及、日本では09年にBIMの技術を競うコンテストが開催され、普及期に入った。
従来のCADは設計部門の単なるツール。これに対してBIMは設計部門だけでなく、施工部門でも使われる。3次元の電子図面であるために見やすくて利用しやすいのが特徴で、多機能携帯端末(タブレット)が普及してくれば建設の現場を大きく変える可能性を秘める。
日本の建設業界にBIMが定着するかを占うのは行政の対応。シンガポールなどは建築許可申請も紙の図面ではなく、BIMで処理する方針を打ち出している。日本の国土交通省は現在、検討段階だという。














